2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

RPSとFIT(フィードインタリフ)②

ずいぶん時間が空いてしまったが、RPSとFIT(フィードインタリフ: 固定価格買取制度)の続き。

今学期の経済学ゼミでは、行動経済学・メカニズムデザインなどの学術的な知見をベースにしたこの分野の制度設計手法を論文を書いている。これからしばらくは、英語で書く前に、こちらで日本語で頭の整理をさせていただこうと思う。学術的な文献の調査はこれからなので、もし何かいい論文があれば教えていただけると嬉しい。

さて、世界中で再生可能エネルギー(Renewable Energy。以下RE)の導入促進を目指した政策が急ピッチで実行されている。カリフォルニア州では、先週ついにシュワルツネッガー知事が再生可能エネルギー(大型水力除く)の導入目標を総発電量の33%(2020年)にするExecutive Orderにサインした。現時点でのREの割合は15%程度なので、あと10年(厳密にはBorrowingできるので13年)でREを現在の2倍以上導入することが求められる。なお、この目標を達成できない電力・ガス会社は多額のペナルティを、未達成量に応じて支払う義務が発生する。

現在の日本でのRPS法の目標値は、2%に満たないが、今回の民主党への政権交代を受けて、日本でもREの導入がいよいよ本格的に始まる。その政策ツールとしてはFIT(フィードインタリフ)、補助金、税制などが考えられる。

それぞれの政策ツール(Policy Instruments)の詳細に入る前に、どのツールを選ぶかの基準(Criteria)を明確にしておくと、長期的に整合性のある政策を打つことができると思う。

Criteria 1.  目標とする再生可能エネルギーの導入を達成するために必要な費用

一義的には、この費用を最小化することが政策のゴールとなるだろう。そのためには、それぞれの技術オプション、及びロケーション(REの発電・送電コストは自然条件およびグリッドとの距離などに大きく依存する)についてマージナルコスト(限界費用)を算定し、マージナルコストカーブを描き、コストが低い順(つまりグラフの左側)から資金を投入していけば、他の条件が一定のもとでは費用は最小化される。

これがRPSがやろうとしていることである。

ただ、このマージナルコストカーブは技術革新によって下にシフトするので、この考え方はある一時点(たとえば1年間)での費用最小化を行うときに有効であるが、長期的な、動的な変化を考慮に入れることはできない。

REは既存の発電方法に比較してコストが高い。政策的にREを支援するのは、REによる電力のコストが、いわゆる環境価値(Environmental Attribute)を考慮した上で、長期的には既存の電力コストと同等になること(つまりGrid Parityが実現すること)を期待しているためである。このため、RE政策には技術政策の側面が加わる。

Criteria 2.  再生可能エネルギーの発電コストの削減速度

もちろん、Criteriaの1と2は別々に考えるべきことではなく、異時点間のトータルの費用の割引現在価値を最小化する問題としてとらえ、統合して考えるべきことである。このため、割引現在価値に直した費用がこの問題の一つの目的関数になると思う。

ただ、なぜあえて別々にCriteriaをたてたかというと、短期での費用最小化の観点と、長期でのイノベーション促進の両にらみで政策を立てる必要があることを強調するためである。

REの政策は技術開発などの不確定性が非常に大きい問題であることが背景にある。さらに、ほぼどのREについても、グリッドパリティを達成するためには10年といったタイムスパンではきかないくらいの時間が必要(風力は欧州ですでに達成しているという試算もあるが、それは例外)であるため、割引率の設定方法次第でこの最小化問題の解は大きく異なるという問題もある。このため、現実的には、ある一時点で将来のことを見通した計画を立てて実行するというよりは、その時々で意思決定は行いつつも、進行度合いをみながらフレキシブルに定期的な見直しをしていく必要がある。
[PR]
by knj79 | 2009-09-20 08:42 | 環境政策