2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

割引率雑感

修論でエクセルのモデルを組み、シナリオを立てて中期的なコスト計算をしている。

そこで、やはり割引率を何パーセントに設定するかというのが、データの見せ方で決定的な役割を果たすことを実感する。

簡単にいえば、将来発生するコストを小さく見積もりたいときは割引率を大きくすればいいし(「大してコストかかりませんよ!」というストーリー)、その逆に、コストを大きく見積もりたいときは割引率を小さく設定すればいい(「将来は大変だ!」というストーリー)。

社会的な割引率の設定に関する正しい答えはなくて(計量経済的に計算することもできるが、気候変動のような超長期にわたる問題の場合、僕はそのやり方を支持しない。子供を持つ親として、子供たちが受け取る未来のことを現在の50%にディスカウントするって、実感にあわなさすぎる)、政策の意思決定をする人が知っておくべきなのは、長期にわたる費用便益分析は、割引率に対して非常に感度が高い(割り引き率ひとつで結果は大きく変わってしまう)ということ。

もうひとつ、社会的割引率の含意は、将来はもっと成長して豊かになっているはず、というもの。気候変動で経済学者の方々が言うのは、将来の世代はもっと豊かになっているのだから、彼らに比べて貧しい現代世代が今対応するよりも、科学の進歩した将来世代が取り組むべきというわけだ。3%成長を50年間続ければ、物質的には4倍以上豊かになる計算だ。全世界的にはそういう考え方もあることもわかるが(賛成はしない)こと日本に関していうと、バブルがはじけ、それからずっと停滞に沈む日本で暮らしていると、これもちょっと実感とあわないなあ。
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Commented by とおりすがり at 2010-03-16 01:27 x
実証研究において重要なのは、自分の先行研究(must readとされるようなpublished された quality papers)において使用されている割引率がいかなる値(の幅)を取っているか、そこから自分が選択する数値とその理由を先行研究との絡みで論拠づけることだと思います。実証屋さんはモデルの仮定に目を向けて、まずそこを突っ込み、それをいじくったら結果がどう変わるのか、何故その中でペーパーの数字を選んだのかをねちねち問いつめていきます。
Commented by knj79 at 2010-04-07 06:23
とおりすがりさん
コメントどうもありがとうございます。そのような精緻な議論は、政策を作る上で非常に重視すべきことだとは思うのですが、気候変動のような100年以上のスパンで社会的な判断を行う際には、「正しい」割引率を設定することが困難であることから、割引率を考慮した費用対効果分析自体が意思決定の補助にはなりにくいのではないか、と思っています。
by knj79 | 2010-03-14 13:52 | その他 | Trackback | Comments(2)