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2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

Offshore drillingはガソリン価格を引き下げうるか?

前回のエントリの続きです。

マケイン、オバマ両候補のエネルギー問題に関する争点となっているのが、Offshore drilling。アメリカの石油生産量は70年代にピークを迎え、それ以降、落ち続けているのですが、ここ1,2年のガソリン価格の高騰もあって、アラスカ沖の石油を開発し、エネルギー自給を達成しよう!と声高に主張する向きがあります(マケイン陣営)。

これを論破する、という問題が宿題の中にありましたので紹介します。
(数字はすべて宿題のペーパーとhttp://www.eia.doe.gov/より。)

アラスカの油田を開発すると、どのくらい生産量が増加すると推定されているのでしょうか?

最大で約20万バレル/日。絶対値としてはそれはそれは大きいもの。だいたいその半分をガソリンにすることができますので、約10万バレル/日のガソリンが生産できます。

しかし、車社会アメリカのガソリン消費をなめてはいけません。

アメリカのガソリン消費量は約1000万バレル/日とされています。

つまり、仮にいまからアラスカの油田を開発して、新たに得られる石油の量は、最大でも、アメリカのガソリン消費を満たすために必要な石油量の1%。

1%。

アラスカの石油開発が、ガソリン価格低下とエネルギー自給のためだとしたら、効果なしです。(アメリカの石油生産量に対しても、4%程度にしかなりません)

燃費のいい車を普及する政策をうったほうが、よほど良いエネルギー自給施策になりえます。極端な話、アメリカでは20年前の車がいまだに走っていますから。

こういう、合理的に考えれば明らか目的を達成することができない政策も、感情に流されてやってしまうのが世の常というのは理解しています。

しかし、きわめて真剣にOffshore drillingがアメリカで検討されているのを見ると、正しい意思決定をするために定量的に考えて、
・ ポリシーアナリストがきちんと発信すること
・ メディアがそれをきちんと報じること
・ そして国民がきちんと判断すること
の必要性を強く感じるのでした。

GSPPが定量的な政策分析を非常に重視するのは、このような事例で合理的な意思決定をするためにあるんだと思います。

(追加)
この画像、衝撃的。エコノミストはこういうのうまいな。
でも、日本もガソリン消費2位なんであまりアメリカを笑えません。
出典:http://www.economist.com/images/ga/2007w27/Petrol.jpg
Offshore drillingはガソリン価格を引き下げうるか?_d0127680_1444179.jpg

by knj79 | 2008-09-17 11:23 | 環境政策