2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

定量的に政策を考える

(注)今回のエントリは、書きながら、「当り前のことなんだけどなあ」と思いましたが、考え方をまとめるという点で掲載させていただきました。当たり前すぎてすみません。

今週は、水曜日に統計、金曜日に経済学の中間試験がありました。ちょっと一息いれています。

うちの大学院では、最初の一年間は統計と経済学を必修で学びますが、これは政策オプションを立案し、検討する際に、定量的に分析することが不可欠であると考えられているからです。
2学期と4学期の政策分析でもこのようなスキルを使った政府機関等に対するコンサルティングを行うことが求められます(これも必修)。

このように、政策立案において定量的思考を求める思想(と呼んでもいいような気がします)がプログラムを支配しているのは、他の公共政策大学院と比較して、バークレーのGSPPの非常に大きな特徴だと思います。
(もちろん政治学やリーダーシップも必修になっており、組織を動かすという点をおろそかにしているわけではありません。)

なぜうちの大学院では定量的に政策(の必要性及び効果)を考えることを重視しているのでしょうか。

もちろん合理的な意思決定のために、コストベネフィット分析は不可欠です。ただ、コストベネフィットのロジックだけでは、「定量的に測れるものなんて限られているし、信頼性も低い」というロジックに勝てません。

それに加えて、見落とされているけれど重要な目的が、全体を見渡すことだと思います。

世にいろいろな公的な活動があるわけですが、そのそれぞれは当然必要だからやっているわけです。当然やって意味はある(はず)。でも、限られた予算で、マンパワーで、本当に今それを、その方法でやるべきなのか?という疑問に答えるためには、組織、国、アジア、先進国、世界、といった全体を見渡して優先順位をつけないといけません。まあ、当り前のことですが。

そしてまた重要なのは、われわれは、定性的に全体を見ることはできないということです。

人間の処理能力には限界があるので、ふつうは定性的に部分を見ることしかできません。それを足し合わせてもそれぞれの見方・考え方が違うので全体は見れません。(それぞれのアイデアをホチキスでとめただけの無意味なものになります)

その限界を超えるためには、様々な情報を切り落として、数字に落とし込むという抽象化をして、初めて全体を見ることができます。だから、本当に戦略を考えようとするなら、定量的に議論をするしかないはずなのです(が、この考え方は根付いていないと思う)。

ということで、定量的に状態(問題)を把握できるような仕組みを持っておくというのは、非常に重要だと思うのです。この意味で、GSPPのアプローチは非常に正しいと思いますし、ぜひ身につけたい考え方だと考えています。経済学や統計で学ぶ「スキル」が直接仕事で活かせるかどうかは正直言ってまだわかりません。しかし、定量的に物事を見よう、というマインドセットについては、少しずつ復活しつつあって、仕事に戻っても忘れてはならないな、と思うのでした。
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Commented by とむ at 2008-10-06 03:45 x
とおりすがりの志願者です。よろしくお願いします。

政策関係の仕事をしている国内の経済畑の先生方も定量的分析の重要性をよく主張されてます。客観的な議論を行うときに、抽象的・定性的な議論をしてしまうとお互いの意見がかみ合わないときに(双方それなりに説得力があるので)言いっぱなしで終わり、時としてパワーゲームみたいな形で意見を通すということになりがちです。そうした状況を避けるうえで、定量的な分析は有益であるということですね。全体像を把握するというのも似たようなところだと思います。

こういうマインドセットこそ、影響力を持つ政治家やマスコミが持って欲しいものだと思ってます。
Commented by knj79 at 2008-10-06 04:17
>とむさん
コメントありがとうございます!わかりやすく言い換えていただいてどうもありがとうございます。まったくそのとおりです。
これって、結局マインドセットなんですよね。大学院というのは、マインドセットを養いに行くところだと思うので、日本で公共政策大学院が増えるのは良い傾向だと思います。
出願、ぜひ頑張ってください。またわからないところなどありましたら、コメント欄にご記入ください。
ではでは。
Commented by Atlanta IT-B at 2008-10-06 12:48 x
ちょっと論点が、ずれるかもしれませんが、ぼく自身は昔ドラッカーが言っていた、NPOの目標の定量的管理というようなものに、関心を持っていて、日本の政策決定機関、政策実施機関、自治体等においても、そういう考え方が浸透しないものかと思っているのですね。
でも、無理に導入しようとすると、数値目標を作ること自身が最終目標になってしまい、その数値にどういう意味があるかとか、どのように意思決定に活用するかという問題意識は、はるかかなたに行ってしまう。そういうのが、関係者のマインドセットが足りないと言うことなのかもしれないですけど。
よく、民間企業は業績で数字で管理しているのに、政府は数値目標がなくていけないとかいう意見がありますが、民間企業が業績を定量的に管理するよりも、政府の方が数百倍、難しいのではないかと思います。政策の定量的管理が不要だと言う意味では決してないんですが。
的外れなコメントだったら申し訳ありません。
Commented by knj79 at 2008-10-06 13:12
>Atlanta IT-Bさん
コメントありがとうございます!いえいえ、まったく的外れじゃないです。
ちょっと言葉足らずなところもあったかとは思うのですが、政策を定量的にマネジメントをしていこうというトップダウンの動きは日本全体にあると思いますし、ほぼすべての組織で定量的評価については取り組んでいると思います。ただ、現場がその重要性を本当に理解して取り組んでいるかどうかで、その効果が全く異なると思うので、そこの重要性を浸透していきたいな、と思う次第なのです。
まさにドラッカーがどこかで書いていたと思うのですが(僕もドラッカーの大ファンです)、世の中は「経済」と「社会」の2面があり、
・目的を達成することに意義がありそれに向けた最適化のダイナミズムを求める「経済」と、
・存在自体に目的があり、安定化を求める「社会」と、
両方を見るのが政策だと思っています。目的関数があって、それに向けた最適化を行う民間企業の活動は非常に定量的評価に向いているのですが、そもそも目的関数の定義自体が難しい「社会」の部分については定量的評価が困難というのが、問題の肝なんでしょうね。
ややこしくてすみません!
by knj79 | 2008-10-05 09:42 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(4)