2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

技術を狙い撃ちして支援するべきか

エネルギーの試験が明後日に迫り、スライドや宿題を見直しています。
この授業では、発電や省エネに関する技術オプションについても学ぶのですが、久々に触れる熱力学は楽しかったりする。

ところで、アメリカでは排出量取引の導入がいよいよ始まろうとしています(東側の州連合、西側の州連合)。また、大統領選の両候補も、排出権取引を明言しています。少し話はずれますが、GSPPのフリードマン先生は西側の排出量取引の制度設計においてリーダー的役割を果たしている経済学者。この前もセミナーで質問してきました。

技術のイノベーションという観点からいうと、排出量取引は、炭素税と同様に、温室効果ガスの削減の手法を問いません。そこが、「太陽電池」、「バイオ燃料」、「電気自動車」といったように、技術オプションを狙い撃ちした政策オプション(補助金、フィードインタリフ、政府予算によるR&D等)と大きく異なるところだと思います。(もちろんそのほかにも違いはたくさんあります)

僕は、企業と政府との技術情報に関する情報の非対称性が存在する以上、政府が技術を狙い撃ちして支援せず、企業が持つ情報を生かして費用対効果がいい方法を試行錯誤してもらう方が効率がよいのだと思っています。
授業で聞いたうろ覚えですが、発電設備からのSO2の削減を狙ってアメリカで排出量取引を導入したら、予想された対策(脱硫装置の設置)ではなく、硫黄分の小さい燃料(質のよい石炭の導入&石炭を微粉化して洗浄)を導入して解決した、という有名なお話があるそうです。手段は任せてコストの小さい方法を選んでもらう、というのは確かに経済的に合理的。

書きかけですが、宿題&試験勉強に戻ります。
このお話については、また。
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Commented by baya at 2008-10-22 15:13 x
一つ謎なことが。東部諸州と西海岸諸州は、なんでそもそも排出量取引をどうにゅうしようとしてるんですか?もうちょっと厳密に言うと、なんで彼らは、そもそも、法的拘束力を持った排出量制限措置を導入しようとしてるんですか?? もちろん「本音ベース」で。知ってたら教えてちょ。
Commented by knj79 at 2008-10-23 11:03
本音は謎です(笑)。
僕もそこが疑問で必ず聞くのですが、納得する答えをしてくれません(建前多し)。
電力は州が所管しているので、需要側のエネルギー政策とみると自然だと思います。勉強が足りずすみません。。
Commented by kk at 2008-10-29 00:14 x
はじめまして、いつも見てますが、一つ気になったのでコメントを。
排出権取引や税の方が効率的であり、技術狙い撃ちよりも良いのではと書かれていますが、短期的には正しいと思います。しかし、短期的な排出権取引の目標に追われていては、長期的な技術開発が進まず、長期的な削減を阻害するという議論があります。何か考えがあれば、聞かせてください。
Commented by knj79 at 2008-10-29 12:23
>kkさん
コメントどうもありがとうございます。長すぎて受け入れられないとブログに言われたので2回に分けて。
イノベーションを促進する政策ツールの選択については、議論のあるところでありますので、考え方は一つではないと思います。私もまだ勉強を始めたばかりなので、誤っているところや考えが足りないところがありましたらご指摘いただけると嬉しいです。参考にできそうな文献は8/2のエントリで挙げています。
さて、まず「排出権取引の導入が長期的な技術開発を阻害し、結果として長期的な温室効果ガスの削減を阻害する」という議論ですよね。まず、長期的な技術開発を行う主体が企業であるとして、そのインセンティブは、「温室効果ガスの削減を求めるマーケットが長期的に存在する」ということだと思います。この点、排出権取引をマーケット拡大のシグナルを送ることになりますので、プラスになると思います。
(続く)
Commented by knj79 at 2008-10-29 12:33
他方、企業は限られたR&D費を使って技術開発を行うわけですから、短期的にマーケットに出すことができる製品の開発に使う額が増加すると、その分長期的な視点を持った研究開発には資金が回りにくくなる、というのはありうると思います。この効果が、長期的な削減を阻害するか、という点について書いてみたいと思います。

まず、二酸化炭素の削減は、ビジネスになると一度わかれば、ローテクな手法でかなり進むと思います(Sustainable buildingなど)。つまり、ボトルネックは技術ではなく、インセンティブとビジネスモデルではないかと思います。
(続く:3回になってしまいました。)
Commented by knj79 at 2008-10-29 12:41
また、ハイテクが必要な市場に対しては、「長期的な技術開発を行うことができる規模になるまで企業が合従連衡する」ことになるのだと思います(自動車会社や製薬会社のイメージ)。たとえば、2000年代初頭に起きた自動車メーカーの合併は、電気自動車、燃料電池車といった内燃機関に代わる自動車の開発資金をねん出するためといわれていました。こういった産業で長期的な技術開発がおこなわれていないわけではない(というか、最も熾烈なR&D競争が起きている)と思います。

ということで、プラスとマイナスの効果のトータルを考えても、二酸化炭素の長期的な削減は阻害されないのではないか、というのが現時点での私の考えです。

こういったコメントをいただけるのは勉強になります。拙文で恐縮ですが、これからもよろしくお願いします。
Commented by LION at 2008-11-06 21:56 x
石炭の話が出てきたのでコメントさせていただきます。
石炭火力はCO2排出量の観点から得てして悪玉に上げられがちですが、日本でも技術革新が進んでいます。
勿来で実証試験が行われているIGCCがその一例で、これにより発電端効率を48%まで改善可能です。
また、世界中でCCS(二酸化炭素地下貯留)の技術も研究中です。
Commented by knj79 at 2008-11-09 01:41
>LIONさん
コメントどうもありがとうございます。おっしゃるとおり、可採量や産出地を考えても、石炭の高効率利用の重要性はさらに増加していくと思います。

特に、アメリカのテレビCMでは、毎日ばんばんクリーンコール(コンバインドサイクル+CCS)の宣伝をしています。アメリカの発電量の50%は石炭ですし、まだ高効率化の余地もあります。

IGCCは私が大学時代に調査をしていたころから非常に有効な技術とされていたのですが、いつごろの実用化が見込まれているのでしょうか?

IGCCなどこれから勉強していきたいと思いますので、またコメントいただけると幸いです。
Commented by LION at 2008-11-09 21:25 x
石炭のIGCCはすでに勿来で去年から実証試験が始まっており、特に問題が出ているとは聞いていません。すぐにでも適用できるのでしょうが日本ではこれ以上の石炭火力新設が計画されておらず、リプレースは当分先と、宝の持ち腐れの状態です。この際中国あたりに技術移転してCDMにより排出権を獲得するというのが現実的なところかもしれません。
Commented by knj79 at 2008-11-10 04:31
> LIONさま
なるほど。技術上の問題はないけれど石炭火力のリプレースメントがないため導入されていないということですね。おっしゃるとおり、石炭火力が総発電の7割を超える中国への技術移転も重要なオプションだと思います。
また、プラント製造技術の維持のために石油火力からのリプレースメントにIGCCをいれるということも必要かもしれません。建築の機会が失われたために原子力発電のプラントや様々な大規模建築物(橋梁など)の製造技術を失ってしまったアメリカの二の舞にならないように。

勉強になりました。これからもご意見いただけると嬉しいです。
by knj79 | 2008-10-22 15:04 | 環境政策 | Trackback | Comments(10)