2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

ピークオイル・気候変動・モータリゼーション①

前にも書いたが、交通分野の独占的なエネルギー源であるConventional Oil(現在使われている石油)の優位性は今後10年以上にわたり揺るがないものの、徐々に中東以外の油田の生産量は減じており、2020年には70%程度の石油生産が中東に集中すると考えられている。

このような地理的な遍在は、輸入国たる先進国にとって、エネルギー安全保障のリスク、及び(ここ数年みられたような投機資金の流入による)急激な価格変動等の国民生活上のリスクをさらに高めることになる。

これら中東の石油は各国の国有企業が管理している。これに手を出せないアメリカ等の石油資本は、先進国に存在するUnconventional Oilの開発を着実に進めることになる。結果、現時点では価格競争力の低いUnconventional Oilへの投資が進み、技術革新が引き起こされ、Unconventional Oilの生産コストは低下する。これにより、Conventional OilからUnconventional Oilへの代替が進む。

(注)Unconventional Oilとは、タールサンド、CTL(石炭を液化して燃料にしたもの)、オイルシェル等の現在商業的に利用が進んでいないものの、今後利用が見込まれ、豊富に存在する液体化石燃料を指す。

さらに、中国を含む多くの国々でモータリゼーションは今後本格化する。DOEの試算では世界の自動車台数(Car & light truck)は2010年の約10億台から2020年に約20億台に到達する。先日販売が決定したタタ社のナノ等、二輪車と同等の価格で購入できる低価格車の導入もそれに拍車をかける。

これら石油の開発・使用に関して今後問題となるのは、その総量ではない。Unconventional Oilを含めた石油の量は、急増する石油需要を長期間にわたって吸収できるほど膨大に存在すると見込まれている。むしろ、炭素強度(単位エネルギーあたりの二酸化炭素排出量)の大きいUnconventional Oilの大量消費による温室効果ガスの放出・気候変動への影響が、その開発・使用の最大の障害となってくる。Unconventional Oilの開発主体が気候変動政策へのロビイングを強化しているのはまさにこの認識による。

したがって、ピークオイル論において本当に問題なのは、原油が足りなくなることではなく、Unconventional OilによるConventional Oilの代替に伴う地球温暖化の加速である。

現時点では交通分野のエネルギー源として、石油(Unconventional Oil含む)の代替財は事実上存在しない。代替財が存在しない必需品の消費を減らすことはいかなる理由があったとしても難しい。たとえば、仮に過去数年のような投機資金の市場への流入による価格高騰が起こったとしても、価格弾力性が非常に低いこのような財の消費は減らない。

このため交通分野からの温室効果ガスの大幅な増加が予想される。しかしながら、世界の温室効果ガスの排出量を2050年までに半減しようとする目標のもとで、交通分野での温室効果ガスの急増を見過ごすことは難しい。
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by knj79 | 2009-03-30 06:11 | 環境政策