2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

RPSとFIT(フィードインタリフ: 固定価格買取制度)

効果的なフィードインタリフ(固定価格買い取り制度)とは

こちらの続き。

成功した、とされるヨーロッパのFITの買い取り価格の特徴は次の二点。

1.Technology specific, scale specific
2.Cost based

と書いた。これはどういうことかというと、再生可能エネルギーから発電した電力は、発電にかかったコストに妥当な利益("reasonable profit"という決まり文句を使う)を上乗せして電力会社が買い取りますよ、というものである。発電技術によっても、そのスケールによっても、さらにいうと場所によっても発電コストが変わってくるが、それに合わせて買い取り価格を変えるので、発電コストの高い技術でも利益がでる、というものだ。

以前、技術を狙い撃ちして支援するべきかというエントリを書いたが、FITというのは、まさに発電コストが高価な技術を狙い撃ちして支援する政策である。そして、FITと太陽光発電がだいたいセットで語られるのは、太陽光発電の発電コストが圧倒的に高価だからだ。

主要な再生可能エネルギーの中で、Roof top solarと呼ばれる住宅設置型太陽光発電の発電コストは、ずば抜けて高い。2007年で$0.50-0.70/kWh程度なので、風力、バイオマス、小水力等の主要再生可能エネルギーに比べると少なくとも4倍は高い。発電の規模が大きくなるにつれて太陽光発電でも発電コストは下がるが、それでも単なる価格競争なら他の再生可能エネルギーには勝てないのが通常だ。

そのため、再生可能エネルギー間の価格競争を促すRPS(Renewable Portfolio Standard)においては、太陽光発電が導入されることは少ない。ざっくりいってRPSとは、再生可能エネルギーの導入目標(需要量の10%、など)を政府が法律で定め、電力会社がその目標量だけ、「なるたけ安い費用で」誰かから購入するか、自分で発電するか、REC(Renewable Energy Credit。また後で説明します)を購入するかしてその目標を達成する制度である。

電力会社は「なるたけ安く」その目標を達成するために、定期的に再生可能エネルギーの発電(予定)者に対して購入希望の募集をし、発電者から提出された申請書の中から原則「売電価格が安い順に」長期購入契約を結んでいき、目標量に達したところで購入終了となる。

経済学的にいうと、マージナルコストカーブの上の契約を目標量(Quata)まで順々に結んでいくということである。

実際のRPSは価格だけでなく他の要素も勘案して購入するので、太陽光発電が入る余地はなくはない。しかし、RPSの原則は上で書いたように再生可能エネルギー間の価格競争が前提となる制度なので、「純粋なRPSによる太陽光発電の導入促進効果は薄い」ということになる。

要は、RPSは太陽光発電の導入を意図した制度ではないということを押さえておかないと、「RPSを導入しても太陽光発電の導入促進に効果がなかった」というような的外れな批判が起こってしまう。

このように、FITをRPSとのからみで位置づけるなら、RPSの競争原理では勝ち残れない、しかし将来性豊かな技術を支援するための制度といえる。ある種弱者救済的な色を持つ制度である。

ここまで読まれた方は、なぜFITを使って高いコストを払う必要があるのか、と考えられるかもしれないが、それはごもっとも。次回はそれについて書きます。

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写真の右上が、高層ビルが林立するサンフランシスコのフィナンシャルディストリクト。このビル群のまんなかで働いています。
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by knj79 | 2009-06-16 15:11 | 環境政策