2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

カテゴリ:環境政策( 97 )

昼間、カフェで論文を書いていたら、服用している親知らずの鎮痛剤のせいか、頭がフラフラになってしまった。グロッギーになっていたところで、妻と娘がやってきて気持ちいい天気のアルバニーの街を散歩をしながら帰ってきて、ひと眠りしたらずいぶんと頭がすっきりした。時間はないので体調はともあれやるしかない。

修士論文のドラフトを妻の友人で家族ぐるみでお世話になっている先生に読んでもらったら、英語だけでなく内容やロジックについてもかなりコメントをいただけけた。ありがたいことである。プリンストンの公共政策大学院で博士をとられて、環境コンサルとして国際的に活躍された先生だけあって中身もよくわかっていらっしゃる。ぼんやり書いた部分はかなり厳しいことも書かれていて、勉強になる。とともにちょっとへこむ。

論文を書いていると、論理的にはここまで言える、というところまで行きたいと思う。もちろん前提となる数字やモデルによって結論は変わってくるのだが、それはそれだ。僕はもとが理系だからかもしれないが、論理的に考えれば、誰がやろうが同じ結論が出てくるはずだ、と強く信じている。結果が人によって違ってくるとすれば、それは前提や計算式(モデル)が違うことが理由であって、それを明確にすればいいはずだと。

だから、今書いている論文も、あまり前職の主義主張とは関係ない。あるいは反しているかもしれない。自分としては、論理的にいうとこうなるはずだ、こういう考え方がモデルを組めばこうなります、といういたって中立的な気持ちで書いている。

卒業して、仕事を再開してからも、論理的にはここまでは言える、という確固としたものを持ちつづけたい。それが身も蓋もない話であったとしても、それを言い続ける義務というか責任があるのではないかと思うからだ。
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by knj79 | 2010-04-26 16:06 | 環境政策

入退出の自由

市場は効率的なのは、何かマジカルなことがそこで起こっているからではない。

効率的でない参加者がいる場合には、より効率的な者が参入して顧客を獲得し、その結果効率的でない参加者が退出せざるを得なくなる。その結果として、市場はより効率的な方向に向かう、という話だ。

入退出を妨げてしまうと、市場が本来持っている効率化機能が失われてしまう。

労働市場についても近いことが言える。雇用の流動性が異常に小さい社会では、社会全体の効率が著しく損なわれていると考えていいだろう(転職が少ない理由が、長期的な視野にたった合理的な行動であれば良いのだが)。

金銭的に、あるいは精神的に、労働の対価を得られないことが明らかである時に、その場で働き続けることは、個人にとっても、社会全体にとっても非効率だ。
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by knj79 | 2010-04-20 07:48 | 環境政策
政策を作るときのプロセスを、論文の整理がてらまとめてみる。

何を目標とするのか、と、それをどうやって達成するのか。

これらはそれぞれリンクしているけど、一緒くたにして考えてもいけない。

1. 何を目標とするのか

何を目指すのかは、自明ではないし、簡単にわかることではない。

通常、いくつかの選択肢があって、それらを比較して選ぶことが、目標を決めるということに等しい。ではどうやって決めるのかというと、

・ 評価基準(criteria)を設定する

ことから始まる。ここを適当にやってしまうと、なぜAという選択肢を選ぶのかが分からない。

政策を作るときに一般的に用いられる評価基準は、経済効率(コスト)、負担・受益の平等さ、正義・公平、政治的な実現可能性、行政での実施可能性などがある。

次に、

・ 選択肢を複数の基準によって評価する

イメージとしては、選択肢を横に、評価基準を縦にとってマトリックス(表)にすること。それぞれの評価基準で○、×、△をつける感じになる。モデルを組んで定量的な評価ができる場合には、いくつかの軸にプロットをすることもできる。

・ トレードオフを見る

どれか一つの選択肢がすべての評価基準について優れていれば、それは文句なしに目指すべきゴールになる。でも、そういうケースはまれだ。どの評価軸でも全然だめな選択肢を排除した上で、2,3の選択肢について詳細に検討することになる。

・ 決める

決める、というのは、それぞれの評価基準に重み付けをするということ。

以上のプロセスが、目標を決める、ということになる。政策立案の上では、ここまでが前半。


2. それをどうやって達成するのか

は、また今度。


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by knj79 | 2010-04-14 10:12 | 環境政策
修論を書きながら思ったこと。

政策立案には、必ず未来についての予測がつきまとう。どこまで突き詰めても不確実性は排除できない。政策が予測通りに企業・消費者の行動を変化させるか、技術革新が再生可能エネルギーのコストを下げうるか、化石燃料由来のエネルギーの価格がどのようなトレンドで上昇するか。未来は誰にも分からない、というのが真実だが、リスクをマネジメントする方策をきちんと持っている必要がある。

気候変動政策を例にとっても、積極派は極端に楽観的な仮定を、消極派は極端に現実的な仮定をおいて計算をしがちだ。議論は平行線をたどる。それらはどちらも間違っているとは言えないが、合理的な意思決定をするためには、その不確実性を無視してはいけない。極端な仮定をおいてはいけない。

不確実性から目をそむけるのではなく、冷静にそれを見据えて、その不確実性が予測にどのような影響を与えるのかを定量化すること。

その上で、不確実性を(良い方向に)減じるためにどのような政策をとりうるかを考える。また、時間の推移とともに現実が見えてきたら、どのように政策を変化させていくかを予め決めておくことも、リスクを管理するためには不可欠だ。

一般論として、推進派はバラ色の未来を語り続ける一方で、冷静にリスクを管理していく責任を一義的に負っているはずだ。


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キャンパスには桜が咲き、合格者とその家族(と思われる人たち)が大挙して見学をしている。春です。
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by knj79 | 2010-04-07 06:37 | 環境政策
温室効果ガス25%削減という大きな目標を前にすると、とにかく考え付く政策を全部やらないといけないかのように錯覚してしまうけれど、それは一番してはいけないことだと思う。

目的関数はなにで、目標を達成するために最もコストの小さい方法は何かを明らかにしておく必要がある。ここでいうコストとは、現在だけのコストではなくて、イノベーションも加味した長期的なコストのことをいう。

目的関数は、温室効果ガスの削減だけでなくてもよい。世界で爆発的に拡大するクリーンテック市場を目指した輸出の拡大でもよいし、公共投資の削減に疲弊する地方経済における雇用の創出であってもいい。

大切なのは、それらの目的関数をどんぶり勘定にせずに、きちんと切り分けた上で何を狙っていくかを明確にしておくことだ。

そして、何を政策目的に選ぶとしても、コストを度外視することは論外だ。国民負担は最小限にとどめなければいけない。過大な負担を強いて、国民の信頼を失うことほど、環境政策に長期的なダメージを与えるものはない。

大胆かつ慎重に制度設計をしていく必要がある。
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by knj79 | 2010-03-11 10:31 | 環境政策
アメリカのシンクタンクの政策提言(ポリシーペーパー)を読んでいて思うのは、内容や手法というより、そのフレーミング(枠組みの設定方法)のうまさだ。日本人的感覚からすると、書き方がうまいだけじゃないというかもしれないけど、政策提言は社会科学の論文ではないのだから、政策決定者の心に届くように、そして行動を促すように書かれていることが一番重要だと思う。

(GSPPのEight-fold pathでいえば、8番目のステップ"Tell your story"だ。このStoryの作り方がうまい。)

アメリカでは気候変動政策を、新しい産業・雇用創出政策として位置づけ、プレゼンテーションしていることが多い。これは実は今に始まった話ではなく、1990年代には研究者によって提案され、2000年代の初頭から政府の文書(特に州政府の文書)に書き込まれてきた。

厳密に、科学的にそれはいえないんじゃないかという内容もあるけれど、文章、グラフ、数字の使い方にはうならされてしまうことしきりだ。この辺はまねしたいな。
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by knj79 | 2010-03-09 06:59 | 環境政策
「石器時代が終わったのは、石が枯渇したからではない。石油の時代は石油が枯渇するはるか以前に終わる」


というのは、サウジのYamani元石油相の言葉(たとえばこちら参照NY Timesの記事)。気候変動政策に関する本や記事では、よく引用される有名な言葉だ。深い。

ではなぜ石器時代が終わったのか?それは鉄や銅、陶器などの、より便利で安価な代替技術が登場したため。

今回のOPECゲームでは、10年後に$70/バレルの代替バイオ燃料(これはたとえば電気自動車に対する電気でもいいんだけど)が登場するという設定だった。

そういう状況で、産油国はどういう行動をとると、利益を最大化できるだろうか。

石油とか貴金属とか、あるいは大気のような環境財などの非再生資源を長期にわたって使用していくためには、機会費用を考慮に入れないと効率的に(利益を最大化するように)使えない。

その機会費用を、名づけてScarcity Rent = Loyalty (あるいはLoyalty component) = Marginal User Costという(論文や教科書によってばらばらに使われている。用語は統一しないのかな・・・)。

この希少レントが問題になるのは、読んで字のごとく、資源が希少である場合に限る。そのような場合には、現時点で資源を使ってしまうと、将来の資源利用の機会を奪ってしまうことになる。つまり、一時点のことだけを考えて資源生産量を決めるのでは不十分で、将来得られたであろう収益(機会費用)をコストとして計上する必要がある。たとえば、今回のOPECゲームの1年目、採掘費用は$6/バレルだが、希少レント(機会費用)は$39/バレルだった。また、代替技術の価格が高いほど希少レントは大きい。

利益を最大化するためには、産油国は代替燃料が登場するその年までに、すべての石油を売り切る戦略をとらなければいけない。石器時代が終わったのは、銅などの代替財が安価に登場したことを考えると、石油に対する安価な代替財が登場してしまったら、石油を地下に眠らせておくことは宝の持ち腐れになるわけで、その前にすべて売ってしまえということになる。

他方、生産量を闇雲に増やしすぎると、価格が下落しすぎる。価格が最適な経路をとるように、各産油国・企業は生産量を決めていく。

また、その生産量の総和が、リザーブの量(経済的に採掘できる埋蔵量)と一致するように生産量を決める。

OPECのようなカルテルがない場合には、いわゆるホテリング価格経路(Hotelling Price Path)が産油国にとっての利益を最大化する価格となる。限界便益MR=価格=限界費用MC(採掘費用+希少レント)となるような価格経路である。希少レントは年を王ごとに大きくなるので、資源価格は年々高まることになる。

この下の図の赤い線がそのホテリング価格経路の例である。この価格よりも高い価格がついていれば、産油国・企業はScarcity rentを考慮しても利益を上げられるので、生産量を増やす。結果、価格は下がる。他方、赤い線よりも低い価格がついていれば、企業は生産するほど損をするので、生産量を抑える。結果として価格はあがる。つまり、価格が赤線より高ければ価格が下がり、価格が赤線より低ければ価格は上がるため、常に価格はHotelling Price Pathに向かう。

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(注:今回すべての価格(青線)がホテリング価格経路(赤線)より上なのは、カルテルを作っていたため。完全競争市場では、価格は赤線の周辺をうろうろするはず。また、完全にカルテルが機能した場合の価格は緑色の線。われわれのゲームでは、完全競争市場と完全協力市場の中間価格をとり続けたことになる。)

さて。温室効果ガスのことを考えると、石油のリザーブが全部産出され、利用されて二酸化炭素として大気に放出されてしまうのは困る。どうすればそれを防げるか、というのを考えるときに、このモデルは有用だ。

たとえば、技術革新により、代替技術(Backstop technologyと呼ばれる)の価格が下がると、Hotelling Price Pathも下がる。つまり、石油を将来のためにとっておく必要が減る(Scarcity rentが減る)ために、産油国は生産を増やすことになる。代替技術の開発を促進すると、結果として産油国に対し、石油増産のインセンティブを与えてしまうわけだ。これが、気候変動政策では非常に重要な示唆であり、悩ましいところ。

これを防ぐためには、生産能力が十分でない段階で一気に代替技術の開発を進めるという方法がひとつ。そうすると、石油から代替技術へのスイッチング時までに生産能力が追いつかない可能性がある。

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by knj79 | 2010-02-22 16:35 | 環境政策
修士論文の検討をしながら、久しぶりにまじめに日本の政策について調べている。

外からでは得られない情報がけっこうある。もちろん、組織の中の人にアクセスすれば、情報は出てくるのだが、組織にアクセスできない人の知恵を借りることを妨げていることは間違いない。

よくあるのが、結論の数字だけ出ていること。計算の根拠が見えない。そこがわからないと、建設的な議論ができない。

いろいろ難しいのはわかるけど、情報をオープンにして、できるだけ同じ情報をシェアしたプロが、オープンに議論できることが、健全で、質の高い政策を生むのだと思う。

透明性は大事だ。
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by knj79 | 2010-02-06 06:56 | 環境政策
この2年間の学生生活では、働いていたころに比べると、はるかに自由に好きなことをやらせてもらった。将来どう役に立つかという観点だけに縛られず、興味のあることをさせてもらった。研究という観点からは、自分の立ち位置(=政策)という部分をある程度はなれて、授業やインターンを通じて技術やビジネスについてもかじった。

ただ、今学期、最終学期のまとめとして修論を書くにあたって、そして半年後に仕事に復帰するにあたって、自分の立ち位置にもう一度意識的になっている。

気候変動の問題を例にとると、日本政府は、2020年までに90年比25%の温室効果ガスの削減を決めた。この目標を達成するには、幅広い企業、家計の創意工夫が必要になるわけだが、理論上、われわれがとりうる方策は、本当に幅広い。無数にあるといっていい。

その方策を3つに因数分解すると、

(技術オプション)×(ビジネスオプション)×(政策オプション)

となるのではないか。交通、省エネ・新エネ、廃棄物など、幅広い分野でそれぞれに最適な組み合わせを探していかなければいけない。

ここでの肝は、組み合わせが重要だということだ。どれかひとつが優れていても、組み合わせた場合に優れているとは限らない。

さらに、実はここでは最適化という言葉は似合わない。なぜなら、これらを組み合わせを評価する軸は、ひとつではないからだ。環境影響の低減量、それに要するコスト、その際に創出される雇用、それらの地理的な分布、政治的な実現可能性、などが、それぞれの組み合わせを評価する際の評価軸として挙げられる。

最適解はない。

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これを個人のベースに落とし込むと。

技術、ビジネス、そして政策と、それぞれに、非常に深く広い領域で、一人が全部をカバーすることはありえない。ということは、学べば学ぶほどよくわかる。

第一に、環境問題の解決に携わる人は、各自の領域で、プロとして、解決策を提示できなければいけない。

第二に、最適な組み合わせは、技術・ビジネス・政策それぞれの分野だけを見ていては決して出てこない。その組み合わせの探求は、非常にダイナミックで、トライアンドエラーで探していかなければいけない。このため、各者は真に優れた組み合わせを求めて対話をすることができる土台を共有していなければならない。
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by knj79 | 2010-02-04 05:09 | 環境政策
ポーターいわく。

少なくとも以下の6つの条件を満たす環境規制がイノベーションを促進する。

1.Signal companies about likely resource inefficiencies and potential tech. improvements
2.Related information gathering can raise corporate awareness
3.Reduces the uncertainty that investments to address the environment will be valuable
4.Create pressure that motivates innovation and progress
5.Level the transitional playing field
6.Is needed in the case of incomplete offsets

環境政策とイノベーションの授業より。
(Environment and Technology from Policy and Business Perspectives)
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by knj79 | 2009-10-02 18:14 | 環境政策