2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

カテゴリ:環境政策( 97 )

引き続き、"Environmental Scarcity and Intergroup Conflict"の
ご紹介をしたいと思います。

前回のエントリのとおり、本論文は主に開発途上国を
テーマにしています。

燃料・エネルギーや食糧、淡水などなど、人間の生存に不可欠な
再生可能資源に対して人々が十分アクセスできないことを、筆者は
環境上の欠乏(Environmental Scarcity。以下ES)と定義します。

先進国ではこのような欠乏は多くみられるものではないですが、
開発途上国ではおおくみられ、事態はさらに悪化しています。

そして、このESが既にグループ間の紛争を引き起こして
いることをフィリピンやセネガルの事例から具体的に示し、
どのようなメカニズムでそれが起こっているのかを明らかにしていきます。

まずは、人間の活動が紛争にどのようにつながっていくかですが、
簡単にいうとこういう流れになります:

人間の活動量(注)の増加 & 生態系の脆弱性
 → 環境変化(生態系劣化)
  → 社会への影響 
   → 紛争

(注)人間の活動量=人口×一人当たり活動量

このモデルで、ESは、以下の3つの原因から主に
引き起こされているといえます。
① 再生速度を超える再生資源の使用による生態系の劣化
② 人口の増加
③ 資源分配の誤り(一部のエリート・地主への集中等)

①、②は全体の欠乏の原因ですが、③は、再生資源の配分の
誤りによる多くの人々の欠乏を引き起こします。

これらが以下のような社会への影響を与えます。

① 食糧生産の低下(これがESの最大の帰結であるといわれています)
② ①による経済活動の低下(多くの途上国の5割以上は農業従事者です)
③ ESに苦しむ人々の移動(農村から都市へ、水や農地のある土地へ)
④ ①~③による社会構造の変化、社会不満の増加等

そして、以下のような紛争が起こります。

① ESそのものによる国同士の紛争(河川の水、漁業、耕地の奪い合い)
  → ただし、これはESが引き起こす主たる紛争ではありません。
② 民族間、グループ間のアイデンティティに基づく紛争
  → 環境難民が、移住先にもともと居住していた人々と紛争を
    起こすこと。これが主たる紛争の原因になります。
③ 略奪紛争

ここで筆者(Homer-Dixon)は、ESによって引き起こされる紛争は、
①のような国対国(トルコ対シリアの水紛争など)のものではなく、
国内、あるいは国境での集団間の紛争が多いことを指摘します。
これはいままで持っていたイメージとは異なり意外でした。

と、大筋はこんな感じですが、抽象的です。
次回に事例を交えてご説明すると、もう少しわかりやすくなるかと思います。
(バングラディシュとインド、セネガル河川、フィリピンの事例です)
ご容赦ください。

グリーンライブラリーの内部です。大学の図書館とは思えません。
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by knj79 | 2008-07-18 17:29 | 環境政策
第4週2日目

安全保障、というと軍事のことを思い浮かべる方が
多いかと思いますが、もう少し幅広い概念と理解して
います。

平たく言うと、生存のために不可欠なものを確保すること、
といえると思います。

生存のために必要なものとは、どういうものがあるでしょうか?
・ 敵からの防御
・ 食糧
・ エネルギー
・ 淡水
・ 大気
・ 災害からの防御

もう少しあると思いますが、二番目以降は環境安全保障の
範疇に入ってきます。

少し話がすれますが、世界的な「流行語」になりつつある
Sustainability(持続可能性)という言葉。
これはまさに環境安全保障を長期的な時間軸でとらえた概念と
考えています。

つまり、長期的に見て、人間社会をこの形で持続していくことが
できるのか?
資源制約・環境制約が、ついに現実のものとして実像を表しつつ
あるいま、この問いは決してとっぴな問ではありません。
日本の視点で、この問いを真正面から取り組む必要が
あると考えています。

さて、といっても、食料やエネルギーを日本が全く入手できなくなる
はずもありません。現実的な考え方として、
日本に関しては、「食糧・エネルギー価格が高騰し、物価が上がる」
ということがまず考えられます。今日はこんなニュースもありました。
日本→海外 所得流出21兆円…世界最大に
BRICSをはじめとする新興経済国のエネルギー・食糧需要が
激増すると予想されているため、資源小国の日本はこれらの
確保に苦労すると思います。
原油価格は5年前の5倍、食料価格も軒並み数倍になっていますし、
長期的にはエネルギー・食料の上昇トレンドは続くのではないでしょうか。

しかし、さらに甚大な影響を受けるのはもちろん開発途上国です。
本論文(Environmental Scarcity and Intergroup Conflict)も
途上国での紛争を詳細に記述しています。

今日は眠いのでこのへんで。
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by knj79 | 2008-07-15 18:43 | 環境政策
第4週1日目

ライティングの課題で、自分の興味にまさにどんぴしゃの
本を読んでいます。その名も「World Security」。その一章が、
「Environmental Scarcity and Intergroup Conflict」
というもの。「環境的欠乏と集団間紛争」とでも訳すのでしょうか。
これがすこぶる面白い!
また追って詳しく紹介しますが、ここで環境問題を安全保障の
一分野としてとらえていることが、いままで自分でぼんやりと
考えていたことと合致していたので、明日から思考をまとめて
いきたいと思います。

まずは予告ということで。

寮の隣にあるグリーンライブラリー。スタンフォードのメイン図書館です。
重厚ですが中は広々としており、非常に快適。蔵書数もはんぱではありません。

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by knj79 | 2008-07-14 17:41 | 環境政策
環境問題といってしまうと、何が問題かわかりにくいですよね。

この留学の間は、

・ エネルギー
・ 食糧
・ 健康被害

の3点に焦点を絞って学びたいと思います。
忘れないうちに、まずはメモ書き。
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by knj79 | 2008-06-01 13:19 | 環境政策
世界は今後どうなるか ①

昨年10月のエントリーのフォローアップです。
このとき史上はじめて1バレル90ドルを突破した石油価格は、
その後も上昇を続け、昨日、1バレル126ドルを突破しました。
NY原油126ドル台、5日連続で高値更新 株は大幅安
また、今年4月から石油価格の上昇の物価への転嫁も進んでおり、
これは今後も続くでしょう。

企業活動も、消費者の行動も、外部条件(前提)に対して最適な
行動を目指して動きます。
これまでは、非常に安価な石油・エネルギー価格を前提として
すべての企業がビジネスモデルを作り上げてきたわけです。
これが、5倍、6倍というコストになってきた場合、
個人や企業は新たな最適化を目指し、小さくない混乱をともないながら、
新しい仕組みを作り上げていくしかないのではないでしょうか。

そして資源小国である日本は、どのようにこの流れにいち早く適応し、
社会経済の混乱を最小限に抑えながら、新しい世界システムにおいても
先進国でいつづける方策を考えなければいけないと思います。

資源価格が数倍に高騰し、社会経済システムが
それに適応するために、根本的な組み換えを余儀なくされる。
大きな変化の時代の幕開けを感じます。
そんな時代の境目に、自分の職業、バックグラウンド、強み、
これらを活かして自分に何をできるかをじっくり考えたいと思います。
これは僕の留学期間内のもっとも大きなテーマでもあります。


最後に、石油価格に限らず、小麦などの食糧、プラチナなどの貴金属、
銅や鉛などの金属も、10年前の数倍の価格に上昇しています。
資源制約という言葉が、ようやく大きな問題として、社会経済システムに
たちはだかり始めています。
僕に何ができるのかを常に考えつつ、資源価格の高騰という
この大きな世界の流れを引き続きウォッチを続けていきたいです。
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by knj79 | 2008-05-10 12:15 | 環境政策
まず、食糧、水、化石燃料について。
われわれの生活の必需品だ。

もちろん、日本が全く手に入れられなくなることはないだろうが、
少なくとも次のことは間違いなく言えるだろう。

① 食糧、水、化石燃料等の世界的な需要の(大幅な)増加

② それに伴う価格の(大幅な)上昇

中国やインド等の経済成長、ライフスタイルの先進国化、
人口の増加がそれらの要因となる。

たとえば、昨日、NYの石油先物市場では1バレル90ドルを突破した。
ここ20年くらい、1バレル20円前後で推移してきたものが
4倍以上になっている。
今後は物価に転嫁されていくだろう。
投機による価格上昇で実態を踏まえていないという声は
2005年に史上はじめて60ドルを超えたころからあったが、
上昇トレンドはそれ以降も続いている。

今の世界の仕組みは、安価なエネルギー、資源、食糧が得られることを
前提としてできている。その前提が大きく揺らぐとき、世界は新たな
仕組みを作り上げることを迫られる。
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by knj79 | 2007-10-19 23:23 | 環境政策
エッセイは、自分のキャリアゴールを描く作業だ。
最近はああでもない、こうでもないと考えている。

キャリアゴールを考える中で、避けて通れないなあと思うのが、
世界は今後どうなるか、そして、その流れに対して自分はどういう
役割を果たしたいか、という巨視的な視点を持つことだ。

ということで、これから、自分の世界認識をつらつらと
書いていこうと思う。
遠回りだけど、キャリアを考える上でこういうビジョンを
持たないと、ちゃんとしたエッセイは書けない。
特に、公共政策系の仕事をしていくなら。
そして、政策立案者として自分の考え方を洗いなおそう。
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by knj79 | 2007-10-06 16:20 | 環境政策