2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

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長期的視点と短期的対応

「外部不経済の内部化とか、どんなにきれいごとを言っても、環境対策っていうのは企業や家計にとってはまぎれもない追加的なコストなんだよ」

前職でお世話になった経済学者の先生との議論の中で出てきた一言。先生は環境の分野で40年近く活躍されてきた大御所といってよい方で、だからこその現実を見つめた言葉だった。もちろん環境対策をしなくてよいということではなく、この厳然たる事実を前提としたうえで、環境政策を考えなければいけない、ということを熱心に説いておられた。

毎週購読しているEconomist誌の6月20日号で、日本政府のエルピーダ・JAL救済のことが記事になっていた。日本はこれまでイノベーションと品質の高さによって知られていたが、今ではゾンビ企業の救済を行うことで有名になっている、という論調だ。

完全競争市場で市場が効率的に機能する理由は、非効率な経営をしている企業は、効率的な経営をしている企業にとって代わられるためだ。それによって効率的な企業が財やサービスを生産し、家計と企業の利益(厚生)は最大化される。Economist誌の編集委員は、日本政府はその大原則に反して何をやっているのだと批判している。

他方で、国会や政府の雇用対策担当者としては、失業率が上昇する中でそれを看過することは考えられない。だからなんとか眼前の危機を回避するために企業救済に取り組む。アメリカでも、ヨーロッパでも、そしてもちろん日本でも、製造業が救済される。

このように、短期的な対応策と、長期的な解決策は、往々にして相反する。短期的には合理的な最適行動を続けることによって、長期的に袋小路に迷い込むことは多い。GMやクライスラーも、短期的には利幅が圧倒的に大きいSUVを作り続けることは合理的だった。市場がそれを求めていたから。いわゆるゆでガエルでたとえられる状況だ。

民主主義のプロセスでは、短期的な対応の方が、長期的な解決策よりも大きな支持を得、勝つことがほとんどだ。民主主義では、様々なアクターがそれぞれのリソースを使って意思決定にかかわることを認められている。政治力を有するアクターが、現状維持を可能にする短期的対応を目指してその力を行使することにより、大きな構造変化を求める長期的解決策を退ける。

だから、気候変動、再生可能エネルギーを含む環境対策が選ばれるためには、短期的な痛み(=企業及び家計に与えるコスト)を超えて、長期的な利益を生み出すことを明確に、わかりやすく示し、長期的な果実を手にする企業、家計を味方につけることが不可欠だ。そして、冒頭の先生の言葉のとおり、短期的な痛みはなくなることはないにせよ、社会全体としては最小化できるような制度設計をする必要がある。
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by knj79 | 2009-06-29 08:54 | 環境政策

村上春樹 1Q84 ①

パーティやバーでアメリカ人と話すとき、僕が日本人だということを言うと、結構な確率で"Do you know Murakami?"という話になる。彼らが読んだことのある作品を挙げ(Windup bird chronicle, Norwegian wood, Kafka on the shore...)、どの作品のどういうところが好きかについて話が盛り上がる。こんな形で自分の長年の読書が生かされるとは思ってもいなかった。アメリカの知識人のなかでは、村上春樹さんは最も有名な日本人だといっていいんじゃないかと思う。

昨年、村上春樹さんがバークレーにやってきたときに30ドルもするチケットが2千枚あっという間に売り切れ、そのほとんどを占めるアメリカ人が彼の言葉を熱心に聞いていた時、サンフランシスコのサイン会でサンフランシスカンが寒空の下長蛇の列を作っていた時、アマゾンの数百に上る書評を読んだとき、そしてアメリカ人の友人が彼の小説の素晴らしさを熱心に語る時、一人の日本人が文化も歴史も全く違うアメリカ人の心を深くふるわせている事実に衝撃を受けた。自分は確かに彼の小説が好きで、繰り返し繰り返し読んだけど、それはあくまで自分の個人的な嗜好だと思っていた。なのに、いつもはあんなに日本人との違いを感じるアメリカ人が、同じ作品を読んで共感していることに驚かないわけにはいかなかった。

アメリカ人は表現の天才だと思う。自分の考えを言葉にして人に伝えることに関しては、日本人は足元にも及ばない。それはもちろん彼らが先天的に表現に長じているわけではない。自分を表現することを幼少のころから要求され、答えてきたからだ。日本人が、集団の空気を読むことを幼少のころから要求され、答えてきたのと同じように。そして、彼らの語る村上春樹評は、熱心でカラフルで大胆だ。かなわないなと思う。

今日も、グーグルに勤める友人が村上春樹の小説と、特にノルウェイの森について、村上春樹のことを知らないアメリカ人やドイツ人、チリ人に向かってこんな風に熱弁をふるっていた。

村上の小説は、魔術的(magical)でレトリックに満ちている。超常現象も多用される。だから雰囲気としてはラテンアメリカの物語に似ているかもしれない(彼はエクアドル系)。そこに、日本のモダンなテイストが加わっていて、彼独特の世界が広がる。

僕は長時間のフライトの時には必ず村上の本を持っていく。読み始めたらノンストップで到着前に読み終えてしまう。そして次の作品が読みたくなる。この数年で自分が見つけた作家ではベストだ。こんな小説は誰も書けない。

僕のベストはノルウェイの森だ。ビートルズのあの曲だよ。ビートルズの曲が物語に直接関係するわけじゃない。でも読み終わった時にはっと気づくんだよ。この物語全体があの曲のレトリックになっているんだって。彼の小説は物語全体が大きなレトリックになってるんだ。本当にAmazingだよ。


熱心に聞き入っていた友人たちも、「それは読まないと」と口々に言う。ノルウェイの森がビートルズの曲の比喩?それがどこまで的を得た批評なのか、僕にはわからない。でも、自分の言葉で感じたことを表現する、しかも臆せず。すごい。


親友の聡君が、サンフランシスコで手に入れられない僕を案じて日本から1Q84を送ってくれた。感謝感謝である。久しぶりに日本語をじっくり読んで、思うこともあった。

州都サクラメントの州議会の議事堂。サクラメントの強烈な日差しを反射し、青空に映える建物だった。
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by knj79 | 2009-06-28 15:18 | 村上春樹
House Passes Bill to Address Threat of Climate Change

本日、アメリカの下院(House)で排出量取引を含む気候変動法案(American Clean Energy & Security Act of 2009)が僅差で可決された。次はこの案を上院の委員会にかけ、ヒアリング、審議がおこなわれる。

カリフォルニアにとっては、自分の州よりも弱い規制なので大きな影響はないような気がするが、カリフォルニアの温暖化対策法(AB32)や西部の州で行われる排出量取引との関係がどうなるのかきちんと理解できていないので、時間をとって調べてみたい。

日本での制度設計を前に、アメリカでの議論を消化しておきたい。

モントレーはいついっても穏やかで気持いい。
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by knj79 | 2009-06-27 13:21 | 環境政策

職場の雰囲気

インターンは、内容ももちろんだけど、アメリカの大企業の本社ってどんな雰囲気なんだろうという好奇心も強かった。新鮮なうちにかいておく。

同僚は、みんなとても明るく、きさくだ。取締役級の人たちでも、もう、何でも聞いてよ!みたいな感じでにこにこしていいかんじ。名前は一度聞いたら覚えるらしく、こちらが知らない人とすれ違っても、にこっと笑ってHi Knj!と挨拶。あの記憶力はすごい。

白人比率が8割以上。9割以上かもしれない。白人比率の低いベイエリアで、この割合は普通ではない。会議に出ると、自分ひとり非白人ということも多く、うーむ、すごいところに来てしまったなあと思う。ちなみに、バークレーでの白人比率は確か3割くらいだったと思う。

バークレーの卒業生がやたらといる。僕がいる部屋(4人でシェアしている。広い。)は全員バークレーの卒業生だし、自己紹介をすると、「どこから来たの?バークレー?僕/私もだよ!Go Bears!!」といわれる確率が結構高い。自分のフロアのインターンも、5人ほどバークレーからきている。「バークレーの卒業生、多いですね」、と同僚にいうと、「うちの本社は半分がバークレー、残りの半分がスタンフォード、あとはいろいろだよ」と言われた。まあ、それは冗談だと思うけど、確かに多い。

勤務時間中は、私語はほとんどなく、一心不乱に仕事をする。昼食も結構机でさくっとおわらせて仕事に取り組み、5時から6時くらいに帰ることが多い。その分、朝7時くらいから始めている人も多いわけだが。

会議が時間通りに必ず終わる。黙ることはまずなく、がーっと意見を言い合うものの、Senior Vice President や Directorの仕切りが非常にうまく、発散せずに会議の目標に向かってぐっと収束する。特に僕の課の課長(Director)が若いのに非常にキレ者で、そのマネジメントスタイルは真似したいと思わせる。かつハンサムで超いいひと(Extremely niceといろんな人に言われている)。

席が広い。ありがたいことに、僕も社員と同じく大きな机と棚をいただいているのだが、日本ならなかなかないような環境で仕事をしている。


初夏のバークレーは本当に気持ちいい天気です。
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by knj79 | 2009-06-25 11:31 | キャリア
このブログではエネルギーや資源に関する制度、経済学のことを書いたりしているが、実はこちらに来る前は予備知識はほとんどなくて、ほとんどすべてアメリカに来てから英語で学んだ。だから、日本語でなんというかよく知らない用語や概念もある。

では、英語で学ぶ方が日本語で学ぶよりも難しかったかというと、おそらくそんなことはない気がする。分野によっては、意外と英語で学ぶ方が楽だと思う。もちろん日本語を読む方が十倍は早いんだが。

理由は、英語の方が質の高い情報を簡単に得られるから。まず、教科書の値段は高いが、マニアックな分野でも素晴らしいものが出ていて、説明がきめ細かい分自習ができるようになっている。たとえば今読んでいるRenewable and Efficient Electric Power Systems (Gilbert M. Masters)もかなりいい。英語だと市場が大きいので、他の言語では利益が出ないようなニッチな分野でも教科書がある。そして英語の教科書の質は一般的にいって素晴らしいものが多い。次に、環境や再生可能エネルギーのような分野は進展が早いので教科書を待っていては間に合わないものが多いが、インターネット上で驚くほど質の高いレポートを手に入れることができる。それも膨大な量を、無料で。
ごく一部だけを紹介すると、NREL(National Renewable Energy Laboratory)UC Energy Instituteのワーキングペーパー(バークレーのBorenstein先生がやっている)CBO(Congressional Budget Office)のレポートなど。いつも感心しながら読んでいる。もちろん学術論文は契約している人しか読めないが、こちらでは、政府・議会系のレポートや論文になる前のワーキングペーパーの質が十分高く、誰でもアクセスできるようになっていることが多い。

ただし、思想や哲学の話になると、英語では全くお手上げになる。上記は、あくまで情報を得るという点において成り立つ話だと思う。念のため。

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今年のStimulusで急に作り始めた橋をバスからとった写真。通勤のバスでベイブリッジを渡るときにいつもうとうとしながら横目に工事が進むのをみている。確かにベイブリッジは混むけど、二本も平行に走らす必要あるのかな?
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by knj79 | 2009-06-24 17:22 | 英語
環境・エネルギー業界は規制産業なので、法制度の変化に大きな影響を受ける。そしてこの分野は全米的にはもちろん、カリフォルニアでは特に動きが激しく、法制度もダイナミックに変化していく。企業は、議会や規制当局、そして政治プロセスにかかわる様々なアクターの動きを注視して経営戦略を立てる必要がある。

そんな中でインターンをしているので、制度を正確に理解することが絶対に必要だ。州政府と連邦政府の管轄(Jurisdiction)、新制度(政策)導入の合法性、あとここには書けないかなり複雑かつ細かなことまで理解しないと政策分析なんてできない。再生可能エネルギーのことはエネルギーに関する制度のごく一部でしかないから、その土台となる全体の制度について幅広く、そして必要な限りにおいて細部まで理解しようと努めている。

一般論として、一見して複雑怪奇に見える制度を正しく理解するこつがある(たとえば、日本人にとって、州政府と連邦政府の関係はなかなかに理解が難しい)。それは、制度設立当初からの歴史を順を追ってたどっていくこと、そして制度設計の裏にある思想-アメリカでは、多くの場合競争原理の導入-をおさえることである。

回り道にも見える方法だが、これが一番制度の狙いをクリアに理解することができる。

制度設計はうまくいくときもあればいかないときもある。歴史を学ぶなかで、カリフォルニアのすごいところは、失敗するリスクを負っても(そして実際失敗も結構するのだが)、よりよい制度を求め続けることだと思った。

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もう一枚会社の前のマーケットストリート。きれいな通りだ。
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by knj79 | 2009-06-23 16:55 | 環境政策
午後5時半。今日中の作成を依頼されていたメモをメールで送って、今週もなんとか乗り切った。

インターンも早いもので4週目が終わった。来週は折り返しの5週目だ。運よく我々の部門のホットイシューを担当することになり、チームの一員として、議会等の動きに対して全社的な意思決定をするシニアオフィサーたちのための情報を収集し、まとめている。

シニアオフィサーたちがどういう軸(クライテリア)を考慮して意思決定をするのか。それらの軸の間でありうるトレードオフは何か。ではどのような情報が、どのような形で提供されるべきか。彼らの意思決定の思考過程を想像してメモの構成や図表を考える。

チームミーティングで説明をし、この分析はいいねえ!とか、この図はいろいろな部署が今後のプレゼンで使うよ!などと上司にいわれると、手ごたえを感じる。自分のすることが役に立つという感覚を久しぶりに思いだした。

アカデミックではないけど、現実の問題を相手にし、小さくてもインパクトを与えるのはとても刺激的で面白い。アメリカ的な意思決定のあり方を垣間見るのもすごく楽しい。細かいことから何から何まで新鮮で、いい経験をさせてもらっている。時間がたつのが早い。

逆にいえば、気をずっと張ってきていることは否めない。今週はミーティングで説明する機会が2回あり、あまりに疲れすぎて、8時、9時には寝てしまうこともあった。ようやく慣れてきたところなので、もう少しリラックスして、あと6週間頑張りたい。

会社の前のマーケットストリート
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by knj79 | 2009-06-20 13:07 | ベイエリア
インターン開始からはや3週間が過ぎた。頭がふやけるほど文書を読みまくっている。そんな空気を引きずって最近マニアな話ばかりなので、写真を載せます。

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僕たちの家は、サンフランシスコ湾のすぐそばにある。この写真は、去年の12月に、家の裏の公園から妻がとってくれたサンフランシスコの写真。

バークレーとサンフランシスコは、サンフランシスコ湾をはさんで向かい合っているので、いつも霧にかすんだサンフランシスコが見える。水辺がすぐ近くにあるのはとても気持ちがいい。

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ゴールデンゲートブリッジも見える。
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ちなみに、ゴールデンゲートブリッジからみたサンフランシスコはこんなかんじ。
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左のはしっこがフィナンシャルディストリクト・フェリービルディング。
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by knj79 | 2009-06-17 15:09 | ベイエリア
効果的なフィードインタリフ(固定価格買い取り制度)とは

こちらの続き。

成功した、とされるヨーロッパのFITの買い取り価格の特徴は次の二点。

1.Technology specific, scale specific
2.Cost based

と書いた。これはどういうことかというと、再生可能エネルギーから発電した電力は、発電にかかったコストに妥当な利益("reasonable profit"という決まり文句を使う)を上乗せして電力会社が買い取りますよ、というものである。発電技術によっても、そのスケールによっても、さらにいうと場所によっても発電コストが変わってくるが、それに合わせて買い取り価格を変えるので、発電コストの高い技術でも利益がでる、というものだ。

以前、技術を狙い撃ちして支援するべきかというエントリを書いたが、FITというのは、まさに発電コストが高価な技術を狙い撃ちして支援する政策である。そして、FITと太陽光発電がだいたいセットで語られるのは、太陽光発電の発電コストが圧倒的に高価だからだ。

主要な再生可能エネルギーの中で、Roof top solarと呼ばれる住宅設置型太陽光発電の発電コストは、ずば抜けて高い。2007年で$0.50-0.70/kWh程度なので、風力、バイオマス、小水力等の主要再生可能エネルギーに比べると少なくとも4倍は高い。発電の規模が大きくなるにつれて太陽光発電でも発電コストは下がるが、それでも単なる価格競争なら他の再生可能エネルギーには勝てないのが通常だ。

そのため、再生可能エネルギー間の価格競争を促すRPS(Renewable Portfolio Standard)においては、太陽光発電が導入されることは少ない。ざっくりいってRPSとは、再生可能エネルギーの導入目標(需要量の10%、など)を政府が法律で定め、電力会社がその目標量だけ、「なるたけ安い費用で」誰かから購入するか、自分で発電するか、REC(Renewable Energy Credit。また後で説明します)を購入するかしてその目標を達成する制度である。

電力会社は「なるたけ安く」その目標を達成するために、定期的に再生可能エネルギーの発電(予定)者に対して購入希望の募集をし、発電者から提出された申請書の中から原則「売電価格が安い順に」長期購入契約を結んでいき、目標量に達したところで購入終了となる。

経済学的にいうと、マージナルコストカーブの上の契約を目標量(Quata)まで順々に結んでいくということである。

実際のRPSは価格だけでなく他の要素も勘案して購入するので、太陽光発電が入る余地はなくはない。しかし、RPSの原則は上で書いたように再生可能エネルギー間の価格競争が前提となる制度なので、「純粋なRPSによる太陽光発電の導入促進効果は薄い」ということになる。

要は、RPSは太陽光発電の導入を意図した制度ではないということを押さえておかないと、「RPSを導入しても太陽光発電の導入促進に効果がなかった」というような的外れな批判が起こってしまう。

このように、FITをRPSとのからみで位置づけるなら、RPSの競争原理では勝ち残れない、しかし将来性豊かな技術を支援するための制度といえる。ある種弱者救済的な色を持つ制度である。

ここまで読まれた方は、なぜFITを使って高いコストを払う必要があるのか、と考えられるかもしれないが、それはごもっとも。次回はそれについて書きます。

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写真の右上が、高層ビルが林立するサンフランシスコのフィナンシャルディストリクト。このビル群のまんなかで働いています。
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by knj79 | 2009-06-16 15:11 | 環境政策

二年目に何を学ぶか

ようやく一週間が終わって、くたくたで眠いはずなのだが、なぜか眠りにつくことができないのでつれづれと書いてみる。

昨年八月から、公共政策学のフレームワークをたたきこまれる一方で、資源・エネルギーに関する経済学、歴史、技術もカバーして、学業面ではなかなか充実した一年目の学期が終わった。今は、一年目に身につけたスキルを現実の課題に最大限活用すべくアメリカのエネルギー企業でインターンをしている。

GSPPのパンフレットにも書いてあったが、本学の目指すところは、政策立案のジェネラリストを育成することである。そのため一年目は必修科目が四分の三を占め、インターンも免除不可というかなりがっちりとしたカリキュラムになっている。このようなカリキュラムの自由度のなさは、逆にGSPPの卒業生へのしっかりとした品質保証を与えることを可能にしていると思う。すなわち、GSPPの卒業生は、

・ ミクロ経済学、定量分析の確固としたスキルを持ち、
・ Eightfold pathというGSPP流の政策立案の型を身に着け、
・ 政治学・リーダーシップ論をベースに公的機関のトップの参謀として
  効果的な政策立案・実行を担うことができる

ことを期待される。僕のインターン先の課にもGSPPの卒業生が2人いるのだが、GSPPの一年目を終え僕が何を身につけているかがきちんと理解してもらえているので、仕事のやりとりもスムーズに行く。経済学をベースにした制度設計の話とか、インターンの10週間をEightfold pathにそってどのように進めていくかなど、前提を共有しているので話が早い。余談だが、GSPPの卒業生が組織にたくさんいるサンフランシスコ市政府やカリフォルニア州政府などでも、暗黙の了解でEightfold pathが使われていると聞いた。

(注)Eightfold pathとは、GSPPが開発した政策立案の方法論で、他の公共政策大学院でも以下の本とともに使われているらしい。必修科目であるIPA、APA、及びインターンでは、この方法論に沿って政策立案をすることが求められる。IPAはまさにEightfold pathの演習をひたすら行うというイメージ。種本はこちら。非常にうすいが、深い。

GSPPの1年目のカリキュラムがこのようになっているのは、汎用的な政策立案のフレームワークをきちんと持っていればどの政策分野にも短期間で応用できるものだが、その逆は難しい、という信念からきている(GSPPパンフレット参照)。

一年目とは対照的に、インターン、及び2年目は選択科目、修士論文(APA)と自分で選べることばかりなので、非常に自由度の高い過ごし方が可能になる。それをどのように活用しようかというのが最近の考え事だ。

まず、エネルギー、環境等の政策分野に特化していく方向性がある。バークレーにはこの分野の膨大な知的資源があるので、やろうと思えばいくらでもできる。あるいは、政策「分野」に特化するのではなく、一年目に学んだフレームワーク・方法論を強化していくという方向性をとる人も多い。具体的には、通年で学んだ定量分析(計量経済学)をさらに進めてモデリングやリサーチデザインの授業をとるとか、ミクロ経済学をさらに進めて行動経済学やメカニズムデザインに特化して学ぶとか。

要は、中身に特化するか、方法論に特化するかという2つの方向性があるということ。そして今後の授業は、後者の方法論を広くカバーしようかと現在は気持ちが傾いている。つまり、経済学、ファイナンス、ネゴシエーション、など。

これまで1年弱過ごしてきて、修士の2年は思ったより短いなと感じた。あれもこれも勉強した、だけでは意味がないので、きちんと今後のキャリアに活かせるような深みを持たせて帰りたいと思う。そのためには、ある程度分野を絞ることも必要であり、悩ましいところ・・・。
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by knj79 | 2009-06-13 15:34 | 公共政策大学院(GSPP)