2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

<   2009年 09月 ( 17 )   > この月の画像一覧

いつも読ませていただいているmasahさんのブログで、人生で達成したいことって?というエントリを書かれていて、こうやって大切なことをまっすぐに見据えて、なおかつ書けるっていうのはすごいなあと尊敬する。

今学期のリーダーシップの授業でそういうことを考えさせられる宿題やリーディング、ディスカッションが多く、自分の軸をきっちりと把握して、人に伝えられないとまずいなと思うことが多々ある。全然まとまっていないけど思いついたことをとにかく書いてみる。

自分の場合、まず第一に自分の家族が幸せになれるような環境を整えることだと思う。まだまだ未熟なので、できていないことも多いけど、ここができないと何にもならないと思うのでがんばりたい。

第二に、日本・アジアの環境問題(公害等による健康被害・農業被害、気候変動による災害など)によって多くの人々が苦しむ現状、そしてこれからさらに悪化する状況の改善に政策というツールをつかって少しでも貢献したい。

言い方は悪いが、古今東西、環境問題なんていつだって邪魔者で、後回しだ。環境問題は、前向きな経済活動に伴って起こる副作用だからだ。それでも、環境問題でダメージを受ける人たちは数多くいる。そして多くの場合、ダメージを受けている当事者は、その原因を特定できずにいる(少なくとも政府などにはその原因を公式に認めてもらえない)。東大の柳沢先生がおっしゃるとおり、環境問題は、誰かがそれを「環境問題だ」と「証明」できない限り問題にはなりえないという構造があり、解決への道のりを一層難しくしている。

それでも、微力ながら何かできることがないかと今でも探しているのが正直なところ。短い期間だけど、これまで日本・アジアの国々の政府や企業、NGOの人たちと出会い、時に涙を流しながら健康被害の現状を訴えられたり、一緒に筆舌に尽くしがたい環境汚染の現場を見に行ったり、信じたくないようなショッキングな話を聞いたりして、そのたびに、怒りとか、悔しさとか、これは「仕方ない」では済まされないという気持ちが強くなった。それとともに、まずは発展をしなければ何も始まらないということもひしひしと伝わってきて、持続可能な開発という、やや苦しい考え方がなぜ出てきたのかも分かってきた。対処療法的に、苦しむ人たちを助けられるような問題ではなくて、構造的なところを変えていかないといけないんだと。

で、具体的な答えはまだないが、環境保全と経済開発を両立しうる解が、もしかするとありうるんじゃないかという希望を持って、今バークレーで学んでいる。ポーターの仮説は美しいけど、そんなきれいごとが実際の交渉の場ではけるかというとまだその自信はない。でも近いうちに、経験を蓄えて、ポーターの言う"properly crafted environmental regulation"を作っていきたいと思う。
[PR]
by knj79 | 2009-09-30 16:26 | キャリア | Trackback | Comments(3)

いわゆるポーター仮説

properly designed environmental standards can trigger innovation that may partially or more than fully offset the costs of complying with them. Such "innovation offsets," as we call them, can not only lower the net cost of meeting environmental regulations, but can even lead to absolute advantages over firms in foreign countries not subject to similar regulations. Innovation offsets will be common because reducing pollution is often coincident with improving the productivity with which resources are used. In short, firms can actually benefit from properly crafted environmental regulations that are more stringent (or are imposed earlier) than tbose faced by their competitors in other countries. By stimulating innovation, strict environmental regulations can actually enhance competitiveness.

Journal of Economic Perspectives—Volume 9, Number 4—Fall 1995—Pages 97-118
[PR]
by knj79 | 2009-09-28 14:45 | 環境政策 | Trackback | Comments(0)
経済学ゼミで執筆する論文の計画書&文献リストを月曜日にフリードマン先生に提出し、先ほど「Very good。今後修正もあるだろうが、この方向で進めるように」とのメールをいただいた。これでようやく本格的な調査に入れる。次は10月中旬に論文の進捗状況を発表し、ゼミのメンバーと先生から意見をもらう。

テーマは、インターンでの仕事の延長線上であり、APA(最終学期の修論)の題材にもつながるが、カリフォルニア州での再生可能エネルギー(RE)導入のための制度設計をする。RPS(現状)、ヨーロッパ型フィードインタリフ、そしてリバースオークションを活用したフィードインタリフが現時点での政策オプションだ。

論点としては、行政管理コストや取引コストも含めた経済効率性、イノベーションの促進(特に技術中立、技術狙い撃ち)、リバースオークションを使った情報の非対称性の解消とWindfall profitの防止、といったところ。

本来は他のテーマも考えたのだが、新たに制度設計をするには、現状の制度を深く理解している必要があり、そうするとインターンで扱ったこのテーマに落ち着いたという感じ。もう一つの個人指導(Independent Study)では、テーマは同じくしつつ、よりイノベーションの政策に特化した視点で論文を書くことになると思う。

日本で温室効果ガス25%削減(05年比30%削減)を達成するためには、国内削減分がどうなるにせよ、再生可能エネルギーの導入量は大幅に増加させないといけないだろう。カリフォルニア州の事例を題材に、市場メカニズムを使ってそのコストを最小化する手法を、理論的な絵空事ではなく、政治・行政的な実現可能性を含めて検討したい。
[PR]
by knj79 | 2009-09-27 14:01 | 環境政策 | Trackback | Comments(0)
GSPPにはキャンパスビジットされる日本人の方も多く、去年から数えると10人以上の方にお会いした。僕が受験するときは、時間的にも余裕がなかったのでキャンパスビジットをすることは全く考えなかったのだが、確かにしておいたほうがモチベーションアップにもつながるし、在校生から直接話を聞くことは、勉強したいこととと大学院のプログラムとのフィットを見ることができるので、有益だろうと思う。

といっても、現実的にはキャンパスビジットをすることは簡単ではないので、インターネットを頼りましょう。公共政策大学院のプログラムや歴史について、ミシガンのフォードスクールの方がすごくわかりやすくまとめているので、ご紹介させていただきます。

outernation@blog 公共政策留学記@ミシガン 大学院受験1
outernation@blog 公共政策留学記@ミシガン 大学院受験2



[PR]
by knj79 | 2009-09-26 12:41 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(0)

Rules of Thumb

来週の経済学ゼミで、行動経済学の論文に関するディスカッションリーダーを任されているので、引き続き論文を読んでいる。

僕たちは何かを選ぶ時、本来ならそれぞれの選択肢について情報を集めて良し悪しを分析して決めるのがいいんだろうけど(たとえばパソコンを買うとき、選挙の投票先を決めるとき)、そういったことを考えるのは面倒なので(Deliberation cost=深く考えるコストが大きい)、もっと単純な、経験的に得られる簡単なルールによって決めていることが多い。

このようなルールのことを、行動経済学ではRules of Thumbと呼んでいる。ビュッフェスタイルの食堂で、いくつか種類があったら、少しずつ同じだけとるとか、大事なことを決めるときには身近にいる信頼できそうな3人の意見を聞くとか、とりあえず周りの人のしていることを真似してみるとか。うまくいかなければ、その決め方を少しずつ変えて、うまくいくように修正していく。

このRules of Thumbは、Deliberation Costを劇的に下げるので、多くの場合には不可欠といっていいのだが、時に非合理な(本人の利益に反する)行動をとらせてしまうことになる。いろいろな失敗のタイプが示されていて、なんというか、経済学の論文というよりは、人生訓の本を読んでいるみたいだ。
[PR]
by knj79 | 2009-09-25 15:53 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(0)
経済学のゼミでは、政府の市場への介入はどのような場合に許容されるか、どのような方法での介入が効果的か、という古典的な、しかし重要なテーマを論文を読んで考えている。もう少し正確に言うと、消費者(需要側)、及び生産者(供給側)の判断・行動を、どのような場合に、どれだけ政府に委任(delegate)すると、社会全体として効率的か、ということを検討している。

そのゼミで、行動経済学の主要論文をアサインされ、面白かったので他にもいろいろと探して読んでみた。政府の役割を考えるというテーマだと、行動経済学や情報の経済学、取引費用経済学(というのかな?Transaction Cost Economics)が極めて重要だ。

量子力学や相対性理論を持ち出さなくても、ニュートン力学(古典力学)が日常スケールの運動を記述するのに近似として十分なように、古典的な経済学も多くの場合に「近似」として有効だ。モデルというのはシンプルであればあるほどよい。

しかし、個人や企業が古典的な経済学で予想する行動をとらない場合も多い。行動経済学では、人間の情報処理能力には限界があり(Boundedly rational)、そのため非常に単純なルールを使って意思決定をしていることや、その結果として時に合理的でない(本人の利益を最大化していない)行動をとることを実験などで明らかにする。心理学の論文のようで、まあ、読んでいて非常に面白い。実際心理学者が書いているものも多いわけだが。

情報をきちんと提供すれば個人や企業が各自で考えてそれぞれの利益、ひいては社会全体の利益を最大化できるはず、というのが古典的な経済学が教えるところだった。アメリカにいると、この考え方が非常に支配的だということがよくわかる。野球場のネットのカバー率が低いこと(ライナーが飛んでくると怖い)、国立公園に柵やガードレールがあまりないこと(これも怖い)、小中学校の清涼飲料の自販機を規制しないことなどは、いちいち消費者や生産者の行動を制約するよりも、使用者がリスクを勘案して行動することが効率的という思想から来ていると思う。

しかし、いくつかの条件がそろった場合には、社会の多数派が自らの利益に反する判断(失敗)をしてしまうことが、ある程度行動経済学の知見を使って予測できる。そんなときには、政府が消費者や企業の代理人として情報を集め、合理的な判断を行い、選択肢を(狭めて)提供することも許されるだろう。

しかし、これってパターナリスティック。実はもう少し慎重になるべきで、ざっくり言うならば、
・ 合理的な判断をできない場合に政府が代理人として判断をすることによって結果的に得られる利益
・ そんな中でも合理的な判断ができる人が、選択肢を狭められることによって被る不利益
・ 政府の情報収集、判断、政策実施に要する費用
を全部足し合わせて、プラスになれば、政府が代理人になってもよいということである。

政策を作る側としては、なんとなくそうだろうなと思っていたことが学問として明らかにされていく感じで、結論だけ聞くと「何をいまさら」感があるが、政策を作る際に行動経済学はプラクティカルな概念整理の道具として使えると思う。


9月はバークレーの一番暖かい月。芝生の上でフリスピーをしたり、教科書を夢中で読んだりする人が多い。
d0127680_1413613.jpg

[PR]
by knj79 | 2009-09-24 14:46 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(2)

実務家の務め

経済学のゼミでは、行動経済学や新制度派経済学などの分野で政策を提案・分析している論文が毎週5つ宿題として課され、それについて2時間議論する。そして、一学期かけて自分の興味のある政策課題を解決する経済学的分析をすることがこの授業のゴール。

今日のフリードマン先生での言葉。

「これらの論文で提案されているような経済学に基づく政策やコンセプトは、実際にはほとんど実現することも、政策立案に利用されることもない。経済学者が大学でいくら論文を書いても、メディアで提案しても、それが政策になることはなかなかないのが現実だ。

こういった経済学に基づく政策が社会にでて実現するのは、君たちのような実務家が、GSPPやその他の大学院で経済学の教育を受けたのちに政府に入り、何としても解決したいと思える課題に出会い、経済学をツールとして政策を立案するときだけだ。

それには一人では難しい。同じような教育を受けた仲間を見つけ、政策を練り上げることも大切だ。

ここにいる君たちが、これから情熱を傾けられる政策課題を見つけ、経済学を活用して問題解決をしてくれることが、私の願いだ。」




d0127680_1710548.jpg
d0127680_17102982.jpg

[PR]
by knj79 | 2009-09-22 17:00 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(0)
4月にゴアさんが来ていい話をしていたのにアップするのを忘れていました。まじかで見る彼は、やはりプレゼンうまかった。

印象に残った部分のメモをコピペします。

曰く、気候変動や貧困問題を解決することは、きわめて困難な課題だ。現実を知る人たちは、それを無理だというだろう。しかしそれは、われわれの意思によって成し遂げることができる。

彼は、環境問題の解決と、1961年にケネディ大統領が提案し、1969年に達成した月への有人飛行と重ねる。提案当時、有識者たちは口をそろえてそれを不可能だといった。しかし、10年も満たないうちに、それは達成された。

月への有人飛行が成功したその時、NASAの管制室で歓声を上げたNASA職員たちの平均年齢は、なんと28歳だったという。つまり、ケネディ大統領の提案当時、20歳そこそこだった世間知らずの若者が、その夢に駆動されて不可能だと思われたことを成し遂げたということだ。

環境保全と経済成長の両立は難しい。今、知識を持つ、老いた人たちは君たちに無理だというかもしれない。しかしその難しい課題を達成するのは、今バークレーのキャンパスにいるような、若い力なのだ、と彼は訴える。今環境問題や貧困問題に取り組むことは、当時のNASAで働くことと同じくらい、エキサイティングなことだ、と。君たちになら、必ずできると私は信じている、と。

いやあ、うまいなあ。

d0127680_4123672.jpg
d0127680_4125680.jpg
d0127680_413897.jpg
d0127680_4132288.jpg
d0127680_4134150.jpg
d0127680_4135240.jpg
d0127680_414355.jpg
d0127680_4141060.jpg

[PR]
by knj79 | 2009-09-21 04:16 | UCバークレー | Trackback | Comments(0)

経済学の言葉で話す

経済学に限らずだと思うけど、学問って、それぞれ固有の用語と文法と思考パターンをもった言語なんだと思う。

一度それを理解すれば、その言葉で書かれたものを理解することができる(インプット)し、その枠組みの中で身の回りのことをとらえなおしたり、表現したり、それを使ってみる(問題解決する)ことができる(アウトプット)。

そして、言語と同じで、身につけるにはとにかく言葉を使うこと。聞いて、読んで、話して、書くこと。このブログでも練習してしまうと思うけど、ご容赦ください。
[PR]
by knj79 | 2009-09-20 10:39 | 公共政策大学院(GSPP) | Trackback | Comments(0)
ずいぶん時間が空いてしまったが、RPSとFIT(フィードインタリフ: 固定価格買取制度)の続き。

今学期の経済学ゼミでは、行動経済学・メカニズムデザインなどの学術的な知見をベースにしたこの分野の制度設計手法を論文を書いている。これからしばらくは、英語で書く前に、こちらで日本語で頭の整理をさせていただこうと思う。学術的な文献の調査はこれからなので、もし何かいい論文があれば教えていただけると嬉しい。

さて、世界中で再生可能エネルギー(Renewable Energy。以下RE)の導入促進を目指した政策が急ピッチで実行されている。カリフォルニア州では、先週ついにシュワルツネッガー知事が再生可能エネルギー(大型水力除く)の導入目標を総発電量の33%(2020年)にするExecutive Orderにサインした。現時点でのREの割合は15%程度なので、あと10年(厳密にはBorrowingできるので13年)でREを現在の2倍以上導入することが求められる。なお、この目標を達成できない電力・ガス会社は多額のペナルティを、未達成量に応じて支払う義務が発生する。

現在の日本でのRPS法の目標値は、2%に満たないが、今回の民主党への政権交代を受けて、日本でもREの導入がいよいよ本格的に始まる。その政策ツールとしてはFIT(フィードインタリフ)、補助金、税制などが考えられる。

それぞれの政策ツール(Policy Instruments)の詳細に入る前に、どのツールを選ぶかの基準(Criteria)を明確にしておくと、長期的に整合性のある政策を打つことができると思う。

Criteria 1.  目標とする再生可能エネルギーの導入を達成するために必要な費用

一義的には、この費用を最小化することが政策のゴールとなるだろう。そのためには、それぞれの技術オプション、及びロケーション(REの発電・送電コストは自然条件およびグリッドとの距離などに大きく依存する)についてマージナルコスト(限界費用)を算定し、マージナルコストカーブを描き、コストが低い順(つまりグラフの左側)から資金を投入していけば、他の条件が一定のもとでは費用は最小化される。

これがRPSがやろうとしていることである。

ただ、このマージナルコストカーブは技術革新によって下にシフトするので、この考え方はある一時点(たとえば1年間)での費用最小化を行うときに有効であるが、長期的な、動的な変化を考慮に入れることはできない。

REは既存の発電方法に比較してコストが高い。政策的にREを支援するのは、REによる電力のコストが、いわゆる環境価値(Environmental Attribute)を考慮した上で、長期的には既存の電力コストと同等になること(つまりGrid Parityが実現すること)を期待しているためである。このため、RE政策には技術政策の側面が加わる。

Criteria 2.  再生可能エネルギーの発電コストの削減速度

もちろん、Criteriaの1と2は別々に考えるべきことではなく、異時点間のトータルの費用の割引現在価値を最小化する問題としてとらえ、統合して考えるべきことである。このため、割引現在価値に直した費用がこの問題の一つの目的関数になると思う。

ただ、なぜあえて別々にCriteriaをたてたかというと、短期での費用最小化の観点と、長期でのイノベーション促進の両にらみで政策を立てる必要があることを強調するためである。

REの政策は技術開発などの不確定性が非常に大きい問題であることが背景にある。さらに、ほぼどのREについても、グリッドパリティを達成するためには10年といったタイムスパンではきかないくらいの時間が必要(風力は欧州ですでに達成しているという試算もあるが、それは例外)であるため、割引率の設定方法次第でこの最小化問題の解は大きく異なるという問題もある。このため、現実的には、ある一時点で将来のことを見通した計画を立てて実行するというよりは、その時々で意思決定は行いつつも、進行度合いをみながらフレキシブルに定期的な見直しをしていく必要がある。
[PR]
by knj79 | 2009-09-20 08:42 | 環境政策 | Trackback | Comments(0)