2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

留学報告3 選択科目

留学報告1 GSPPのカリキュラムの概要

留学報告2 必修科目


2年目は全学からどのような選択科目(ただし大学院レベル)を履修してもよい。これは、一年目に汎用的な政策立案のフレームワークを身につけていれば、そこから専門化を図ることは容易であるが、その逆は難しいというGSPPの理念からくるものである。なお、このような考え方は、GSPPの卒業生にも広く支持されており、そのカリキュラムの有効性が立証されていると考えられる。

 選択科目の専門化の方向性としては、①政策分野(環境・エネルギー、医療、経済・金融等)に特化する方向と、②政策手法(計量分析、リサーチデザイン、費用対効果分析、交渉学等)を深化させる方向と、大きく二つに分けられる。①の政策分野に特化する場合には、ビジネススクールや工学部等の他学部の授業を活用することができる。バークレーの各学部は各種ランキングで全米トップ5に入るものがほとんどであるため、どのような分野でも質の高い教育を受けることができる。一方、②の政策手法についてはGSPPが充実した選択科目を提供している。私はエネルギー政策に特化した授業選択を行った。

 まず一年目に、GSPPとエネルギー資源グループ(ERG)の共同科目であり、バークレーで最も有名なエネルギーの授業である"Energy and Society"(秋学期4単位)を履修した。これは、私の指導教官でもあるDan Kammen教授が、化石燃料から原子力、再生可能エネルギーまで、技術、経済、政治、途上国開発の観点から網羅的に教える授業である。バークレーのエネルギー関連授業のいわば入り口となる授業であり、同校でエネルギー政策を学ぶ方全員におすすめしたい授業である。

 他学部では、ビジネススクールのEnergy and Environmental Market(Severen Borenstein教授。春学期3単位)とエネルギー資源グループのEnergy Economics(Richard Norgaard教授。春学期3単位)を受講した。これらの授業は共に、化石燃料と再生可能エネルギーと排出権、デリバティブのマーケットについて、歴史的背景も含めて、ミクロ経済学及びファイナンスの観点から分析するものであった。ビジネススクールの授業は、エネルギー企業というミクロの立場から、マーケットにおいてどのような戦略をとると利益を最大化できるかを学んだ。特に、シミュレーションゲームで産油国や電力会社の立場からマーケットを見る経験ができたことは、今後排出権取引市場等の制度設計を行う上で有効と感じた。一方、エネルギー・資源グループの授業では、よりマクロな視点、業界の歴史や経済学の思想が強調されていた。特に、様々なエネルギー経済モデルの仮定を明らかにし、エネルギー・資源問題を分析する際の経済学の限界を理解することができた。

 また、いわゆるグリーンイノベーションを促進する政策を学ぶため、GSPPのMargaret Taylor教授の"Environment and Technology from Policy and Business Perspective"(秋学期4単位)を受講するとともに、同教授を指導教官として、我が国の再生可能エネルギー政策をイノベーションと経済学の理論から分析するIndependent Study(秋学期3単位。個人指導により論文を執筆するもの)を受講した。

このほか、Lee Friedman教授の経済学のゼミ(Microeconomic Organization and Policy Analysis。秋学期3単位)を受講した。これは政策立案に特に有効な情報の経済学、産業組織論、行動経済学、イノベーションの経済学等について、週に4本の論文を輪読しつつ、それらの理論を用いて各人の興味のある政策課題を分析し、一学期間かけて論文を執筆するというものであった。私は、カリフォルニアの現行の再生可能エネルギー政策(特にRPSと固定価格買取制)を分析し、リバースオークションの導入による経済効率及びイノベーション促進効果の向上を提案した。

 世界屈指の総合大学であるバークレーでは、極めて面白い授業があらゆる分野で揃っており、学びたいことが学べないということはまずないだろう。逆にほとんどの人は、面白そうな授業が多すぎて、授業選択に悩むことになる。

留学報告4 プロジェクト(IPA)、サマーインターン、修士論文(APA)



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# by knj79 | 2010-08-08 18:21 | 公共政策大学院(GSPP)

留学報告2 必修科目

留学報告1 GSPPのカリキュラムの概要

GSPPでは学生に対し、どの政策分野でも汎用的に活用できる能力・スキルを一年目に身につけることを課している。このため一年目は必修科目が四分の三を占める、かなりがっちりとしたカリキュラムになっている。このようなカリキュラムの自由度のなさは、逆にGSPPの卒業生へのしっかりとした品質保証を与えることを可能としている。すなわちGSPPの卒業生は、必修科目を通じて、
・ ミクロ経済学、定量分析の確固としたスキルを持ち(The Economics of Pubic Policy Policy Analysis 、Decision Analysis, Modeling, and Quantitative Methods)
・ Eightfold pathというGSPP流の政策立案の型を身に着け(Introduction to Policy Analysis、Advanced Policy Analysis)、
・ 政治学・リーダーシップ論をベースに公的機関のトップの参謀として効果的な政策立案・実行を担う(Leadership and Strategy、Political and Agency Management)ことが期待されている。

 一方、一年目の必修中心のカリキュラムが終わると、二年目はほぼ自由に選択科目を取ることができるので、各人の政策分野に集中することができる。
 以下に各必修科目に関する概要・感想をまとめる。

The Economics of Pubic Policy Analysis (通年8単位)
 政策立案・評価において経済学(一部ファイナンス)をどのように活用するかを学ぶ。一学期に三回のテスト、二週間に一度のプロブレムセット、一学期に二度のポリシーメモの作成と、手を動かして経済学の基礎を叩き込むと同時に、経済学を「使って」政策を作る訓練を積む。このため、経済学を学んだことがなくても一年目が終わる頃には政策立案に経済学を使えるレベルまで高めることができる。Lee Friedman, Steve Raphael両教授はとにかく教えるのがうまく、自分も含めて経済学に引き込まれてしまう学生は数多い(経済学の博士課程に進むものもいる)。
 この授業の目標は、経済学的に正当な政策を作り、その上で、経済学を学んでいない政治家、政府高官、メディア、NGO等に対して、経済学の専門用語を使わずに彼らを説得できるようになることであった。例えば、行政組織のトップに対するポリシーメモには、経済学の専門用語を使うことが許されていない。
このように、無味乾燥な経済学を学ぶのではなく、いかに経済学を政策立案のツールとして使うかを学ぶ実践的な内容であった。内容はNicholsonの"Microeconomic Theory"とFriedmanの"Microeconomics for Public Policy Analysis"の全範囲である。

Decision Analysis, Modeling, and Quantitative Methods(通年8単位)
 政策の効果を定量的に評価する計量経済学の手法を学ぶ。こちらも経済学同様の宿題・テストの構成でワークロードは重いが、その分得られるものも大きい。この授業の目標は、①自らデータを定量的に分析して仮説を検証できるようになることと、②経済学等の論文を読みこなして政策立案に役立てることの二つである。①については統計分析ソフトSTATA等を用いて、政策に関するデータを計量経済的に分析する手法を学び、練習を重ねる。一方、②については、計量経済的な分析のいわば「賢いユーザー」としての能力を高めることも重視し、経済学の論文を読んで、モデルの立て方にどのような問題があるか、分析結果に異なる解釈がないか、などを検討する訓練を行う。
 内容はWoodridgeの"Introductory Econometrics"とKenkelの"Introductory Statistics for Business and Management"の全範囲である。

Leadership and Strategy(秋学期4単位)、Political and Agency Management(秋学期4単位)
 前者はリーダーシップの諸原則を、ケーススタディや自らの経験に照らし合わせて学ぶ授業であった。クリントン政権時の労働長官で日本でも有名なRobert Reich教授は私が出会った中で最も話のうまい方であり、リーダーシップというとらえどころのないソフトスキルを実体験と結びつけて教えらえる希有な教授であった。後者は政治学(主に連邦政府レベル)、交渉学についてケーススタディやシミュレーションゲームを通じて学ぶ授業であった。
アメリカ流のリーダーシップと政治学、交渉学は、日本の組織においても十分応用可能であり、帰国後の仕事で最も直接的に役立つと感じている。また、アメリカの組織と政治を理解するのに非常に役立つだろう。

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# by knj79 | 2010-08-07 17:09 | 公共政策大学院(GSPP)
1.GSPPについて
 私は2008年8月にカリフォルニア大学バークレー校の公共政策大学院(以下「GSPP」。学外ではGoldmanと略称)に入学し、2010年5月に公共政策学修士(MPP)を取得した。
1969年の開校以来、公共政策のトップスクールとして定評がある同校であるが、1990年代からゴールドマン財団の多額の寄付を受け、プログラムの拡充及び国際化を続けている。特に、オバマ政権の国務次官補就任のためGSPPを離れたNacht前学長の後任として2009年に就任したBrady学長は、国際化の更なる推進や他学部との連携等、精力的にプログラムの改善に取り組んでいる。
私が学んだMPPプログラムは一学年80人程度が入学する。発足当初、アメリカ国内の政策に重点を置き、アメリカ人学生を多く受け入れてきた同校であるが、90年以降徐々に留学生の割合を高め、我々の学年は30%弱が留学生であった。アメリカ人はシンクタンクやNGO出身の学生が多く、留学生は中央政府・中央銀行の官僚や弁護士、民間企業の出身者が多い。近年の不況に伴い一時的にアメリカ人学生の比率を高めているとは思うが、長期的にはGSPPの国際化を進めるトレンドは続くものと思われる。

2.カリキュラムの概要
GSPPのカリキュラムは、他のポリシースクールと比較して大きく三つの特色がある。1) 計量分析関係の必修が多く、厳しい(Rigorousな)カリキュラム、2) 免除が認められない10週間の夏季インターンシップ、3) 最終学期の大半をしめる修士論文。この三つの違いは、GSPPのカリキュラムと学生生活を他のポリシースクールとかなり違ったものにしているように思える。なお1)の必修科目については、同等の科目を以前に受講している学生は、かなり容易に受講免除が可能であり(免除試験等はなく、教授から同意を得るだけで良い)、一年目から自由に選択科目を取ることができる。
アメリカの最も競争力の高い産業は高等教育であるとよくいわれるが、2年間の教育を受けてみた感想に合致する。カリキュラム全体、それぞれの授業、世界中から集まる優秀な友人など、大学で得られる経験への満足度は極めて高い。


留学報告2 必修科目


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留学報告4 プロジェクト(IPA)、サマーインターン、修士論文(APA)
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# by knj79 | 2010-08-07 16:48 | 公共政策大学院(GSPP)