環境上の欠乏が引き起こす紛争(ケーススタディ②)
2008年 07月 21日
セネガルとモーリタニアはアフリカの西端に位置する国です。
1989年に、セネガルとモーリタニアとの国境を区切る
セネガル川流域において、紛争が起こりました。
この紛争は、人為的な資源配分の失敗による紛争の例として
説明されています。
FAO(国際連合食糧農業機関)が1982年に行った調査により、
人口増加を続けるセネガルとモーリタニアは、灌漑や肥料の
大幅な改善による農業効率向上なしに国民を食べさせて
いけないことが明らかになりました。(なるほど。)
これを受け、セネガル・モーリタニア両政府は、国際金融機関
から資金を得、セネガル川流域にダムを建設し、水力発電に活用し、
また耕地の生産性を向上させるための灌漑を行いました。
この結果、セネガル川から農業用の水を引くことができる(つまり
灌漑できる)地域の価値が急速に高まりました。
ここで、モーリタニア政府("white elite"と本文では記されています)は、
土地の所有権に関する法律を書き換え、黒人をその地域から追い出しました。
これは、モーリタニアの上層部はアラブ系白人のムーア人が抑えているという
黒人との人種間対立が背景にあります。
1989年、農業を行う土地を奪われたモーリタニアの黒人のムーア人への
怒りは頂点に達し、大暴動が起こりました。
ムーア人が所有する17,000の商店が破壊され、数千人が死傷する事態と
なりました。その結果、20万人の難民が両国にあふれました。
さらに、モーリタニア政府はセネガル川流域に住む黒人を"Senegalese"と
分類し、土地や家畜の所有権や市民権のはく奪を行いました。
”Senegalese"とされた人々は強制的にセネガルに追放され、彼らはさらに
国境付近での家畜の強奪や紛争を引き起こしました。
と、このように、本ケースは前々回のエントリで述べたESの3つの要因が絡み合って
引き起こしたものといえます。つまり、
① 人口増加とそれに伴う耕地の不足
② 再生可能資源の極端な分配・土地や家畜の所有権変更
特に、大規模灌漑プロジェクトに合わせて②を急激に行った結果、
既存の人種間対立をさらに悪化させ、紛争を
引き起こしたケースといえます。
(取り急ぎの乱文ですので、追って加筆修正します)
本文とは全然関係ないですが、Halfmoon Bayという近くの海岸に行ってきました。あいにくの天気でしたが、太平洋はよかったです。哲学的に何かを考え込むかもめもいました。