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2008年7月から2年間、カリフォルニア大学バークレー校 公共政策大学院に留学しています。まとまりのないひとりごとです。


by knj79

二年目に何を学ぶか

ようやく一週間が終わって、くたくたで眠いはずなのだが、なぜか眠りにつくことができないのでつれづれと書いてみる。

昨年八月から、公共政策学のフレームワークをたたきこまれる一方で、資源・エネルギーに関する経済学、歴史、技術もカバーして、学業面ではなかなか充実した一年目の学期が終わった。今は、一年目に身につけたスキルを現実の課題に最大限活用すべくアメリカのエネルギー企業でインターンをしている。

GSPPのパンフレットにも書いてあったが、本学の目指すところは、政策立案のジェネラリストを育成することである。そのため一年目は必修科目が四分の三を占め、インターンも免除不可というかなりがっちりとしたカリキュラムになっている。このようなカリキュラムの自由度のなさは、逆にGSPPの卒業生へのしっかりとした品質保証を与えることを可能にしていると思う。すなわち、GSPPの卒業生は、

・ ミクロ経済学、定量分析の確固としたスキルを持ち、
・ Eightfold pathというGSPP流の政策立案の型を身に着け、
・ 政治学・リーダーシップ論をベースに公的機関のトップの参謀として
  効果的な政策立案・実行を担うことができる

ことを期待される。僕のインターン先の課にもGSPPの卒業生が2人いるのだが、GSPPの一年目を終え僕が何を身につけているかがきちんと理解してもらえているので、仕事のやりとりもスムーズに行く。経済学をベースにした制度設計の話とか、インターンの10週間をEightfold pathにそってどのように進めていくかなど、前提を共有しているので話が早い。余談だが、GSPPの卒業生が組織にたくさんいるサンフランシスコ市政府やカリフォルニア州政府などでも、暗黙の了解でEightfold pathが使われていると聞いた。

(注)Eightfold pathとは、GSPPが開発した政策立案の方法論で、他の公共政策大学院でも以下の本とともに使われているらしい。必修科目であるIPA、APA、及びインターンでは、この方法論に沿って政策立案をすることが求められる。IPAはまさにEightfold pathの演習をひたすら行うというイメージ。種本はこちら。非常にうすいが、深い。

GSPPの1年目のカリキュラムがこのようになっているのは、汎用的な政策立案のフレームワークをきちんと持っていればどの政策分野にも短期間で応用できるものだが、その逆は難しい、という信念からきている(GSPPパンフレット参照)。

一年目とは対照的に、インターン、及び2年目は選択科目、修士論文(APA)と自分で選べることばかりなので、非常に自由度の高い過ごし方が可能になる。それをどのように活用しようかというのが最近の考え事だ。

まず、エネルギー、環境等の政策分野に特化していく方向性がある。バークレーにはこの分野の膨大な知的資源があるので、やろうと思えばいくらでもできる。あるいは、政策「分野」に特化するのではなく、一年目に学んだフレームワーク・方法論を強化していくという方向性をとる人も多い。具体的には、通年で学んだ定量分析(計量経済学)をさらに進めてモデリングやリサーチデザインの授業をとるとか、ミクロ経済学をさらに進めて行動経済学やメカニズムデザインに特化して学ぶとか。

要は、中身に特化するか、方法論に特化するかという2つの方向性があるということ。そして今後の授業は、後者の方法論を広くカバーしようかと現在は気持ちが傾いている。つまり、経済学、ファイナンス、ネゴシエーション、など。

これまで1年弱過ごしてきて、修士の2年は思ったより短いなと感じた。あれもこれも勉強した、だけでは意味がないので、きちんと今後のキャリアに活かせるような深みを持たせて帰りたいと思う。そのためには、ある程度分野を絞ることも必要であり、悩ましいところ・・・。
by knj79 | 2009-06-13 15:34 | 公共政策大学院(GSPP)